「CMF」では、C/Dセグメントの13の新型車のアーキテクチャーをカバーする。エンジンルームモジュールは2種類(High hoodとLow hood)、コックピットモジュールは3種類(High positionとMiddle positionとLow position )、前部モジュールは3種類(Heavy weightとMiddle weightとLight weight)、後部モジュールは3種類(Heavy weightとMiddle weightとLight weight)ある。理論上、2×3×3×3=54種類のモジュールの組み合わせで車を造ることができる。各モジュールを構成する部品には車種の違い応じて適度のバリエーションを持たせるが、原則、同じ部品から造る。

CMFの基本的な考え方
CMFの基本的な考え方

 そして、従来のプラットホーム中心の開発方式と大きく違う点は、「上位統合」という考え方が消えることだ。派生車種をたくさん造るため、これまでは重量が重いミニバンやSUVに耐えられるプラットホーム造る。これが「上位統合」という概念だ。燃費効率の向上を求めて車体を軽量していく方向性とは逆の事態に陥っていた。しかし、燃費効率の良し悪しが商品力を左右する時代になっているため、結局は同じプラットホームなのに軽量化対策で違う部品を設計し、部品の種類が増えてコスト高の大きな要因となる。CMFではこうした上位統合の概念を捨て、車体重量が近い車同士で部品の共通化を進めていくことも大きな特徴であろう。

 CMFではこれまで「聖域」とされていた電子の共通化に力を入れたことでも注目される。「プラス1」の部分に当たる電子制御のモジュール開発のことだ。電子制御は、同じ日産社内でもブラックボックス化され、車種間で電子部品の共用化がいつまでたってもできなかった。「機械屋」中心の車体設計から見れば、電子部品のスペックや通信方法は口が出せない世界だったが、ここにメスを入れ、電子制御ユニットのインターフェースや通信のルールといった「電子のアーキテクチャー」を決めた。たとえば、速度調整やエアコンコンプレッサーの制御は、日産ではエンジンの電子制御ユニットで対応していたが、ルノーは別のユニットが制御していたのを統一化した。

 このCMFを推進していくと、車の構造がモジュール製品であるパソコンと似てくる。しかし、違う点もあるし、そこが自動車メーカーの競争力を握る点である。

 パソコンはモジュール部品間のインターフェースを公開しているが、CMFは公開しない。自動車の場合、モジュール間の相互作用が安全や騒音に強く影響するため、シミュレーション技術などを駆使して最も適切な組み合わせを実現させることが自動車メーカーのノウハウである。