IEKの視点

(1)世界のスマートフォン市場はM字型へ

 低価格スマートフォンのニーズは中国市場で急成長しており、世界のスマートフォンのトレンドに変化をもたらしている。これまでの成熟市場ではハイエンドのスマートフォンが中心だった。このため、世界の大手携帯電話機メーカーの多くは差異化を図ったハイエンド製品を自社で開発・製造しており、外部への製造委託の割合は低かった。

 その後、中国でモバイル・ブロードバンド・ネットワーク・サービスの普及が進んだことで、低価格スマートフォン市場が成長し始めた。現在も、その需要は急成長を続けている。さらに、その他の新興市場においてもモバイル・ブロードバンド・ネットワーク・サービスの整備が進めば、将来は低価格スマートフォンの市場成長が進むだろう。世界のスマートフォン市場は、低価格帯と高価格帯にピークを持つM字型へ向かっていくことになる。

(2)低価格スマートフォンの成長が、外部委託製造の需要を促す

 低価格スマートフォンは限られたコストでまずまずの機能を提供している。ミッドレンジやハイエンドの機種の製造と比べると、参入障壁が低く、携帯電話機メーカー間の競争は激しい。納期短縮の努力が、受注できるか否かのカギとなっている。このような状況下で、携帯電話機メーカーはコストを低減し、さらに出荷時期を早めるために、外部委託製造に頼る機会が増加する。

 こうした状況から、台湾の携帯電話機のOEM(original equipment manufacturing)メーカーにとっては、スマートフォンのOEMを受注する上で重要な時機が到来している。中国メーカーと、その他の新興市場において高いシェアを持つ世界の大手メーカーのいずれも、台湾の携帯電話機OEMメーカーにとって主な顧客ターゲットになる。

(3)台湾のスマートフォンOEMと半導体の需要は期待大

 2012年の台湾携帯電話機OEMメーカーのスマートフォン出荷台数比率は、低価格スマートフォンの需要増加によって大幅な増加が期待できる。スマートフォンの平均単価は従来型のフィーチャーフォンの約3倍であり、台湾の携帯電話機OEMメーカーの生産総額と平均単価を押し上げることになる。しかし、低価格であるがゆえに、OEMメーカーの利潤にも影響するため、いかにコストを抑えるかが最も重要になる。

 そこで、低価格スマートフォンのコスト削減や薄型・軽量化のような多様な要求に対応するため、機能の統合を追求し、半導体チップへの集積化を促進することになる。例えば、MediaTek社は、Wi-Fi、GPS、FM、Bluetoothなどの機能を同時にサポートできる統合型の半導体チップを開発した。低価格スマートフォン市場が成熟した後も、統合型の半導体チップやプラットフォームは成長が続く見通しである。川上のチップ・メーカーにとって重要な市場であり続ける。