電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)を開発する上で最大のネックは車載電池のコスト。数年前に比べると大きく下がっているとはいえ、それでもEVの価格の1/4~1/3を占めるとされます。

 その車載電池のコストのうち、見逃されがちなのが周辺回路のコスト。特にLiイオン2次電池を使う場合は安全性を高めるため、数セルごとに電池監視用ICや各セルの電圧を揃える「セルバランス」用の回路など多くの周辺部品を搭載します。

 もっと具体的に書くと、仮に電池セルの数が96個とすれば、12セルを測れる電池監視ICが8個、冗長系を組むために必要な電圧や温度を測るためのICが8個、セルバランス用の回路が96個、IC同士をつなぐ通信線、ICの情報を処理するマイコン(32ビット級)が1個、マイコンに高い電圧が加わるのを防ぐ絶縁器(アイソレータ)、マイコンで処理した情報を車載LANのCAN(Controller Area Network)に流すトランシーバIC、など多くの周辺部品が必要です。

 冗長系が必要なのは、車載電子システムの機能安全規格「ISO 26262」を達成するためです。電池監視ICが壊れたとしても、Liイオン2次電池を危険な状態に陥らせないよう、別のICで電圧を測り続ける必要があるのです。冗長系を構築せずに同規格を達成する手段もありますが、その場合はマイコンで電池監視用ICの故障を常に診断する必要があります。ただ制御用ソフトウエアが複雑になる上、電圧を測るたびに診断が必要なので測定時間が大幅に伸びてしまうという欠点があります。

 これだけの数の部品が必要というのは、逆に言えばまだまだコスト削減の余地があるということ。最近、この周辺部品の数を大幅に減らせるシステムを開発したのがルネサス エレクトロニクスです。これまで外付けしていた冗長系のための回路やセルバランス用の回路を内蔵したICを開発しました。同社は「現行品と比べてシステムコストを半減できる」とみています。

 2012年6月29日に都内で開催するセミナー「EV/PHEVの次世代要素技術を知る<モータからインバータ、電池、キャパシタ、ブレーキまで>」では、この電池管理システムの仕組みについてルネサス エレクトロニクスが講演します。このほかにも、トヨタの技術者に「車載モータ技術の最前線」、日産自動車には制御技術、デンソーには「車両展開に向けたPCUの小型化と部品標準化」などを講演してもらいます。電動車両の次世代技術に関心のある方は是非ともご参加ください。