【市場の情報を迅速・的確に分析・活用対応できるようにすること】

 事業に必要なマーケティング情報を迅速かつ的確に収集し、分析して活用することがビジネス成功の鍵となる。一昔前ならば、販売会社や息の掛かった販売店を通じて“お客様の声”を拾い、分析して商品戦略に反映することができた。現代では量販店やネット販売など、販路や市場がますます多様化、複雑化、巨大化してきており、市場の情報を適時・的確に入手することは簡単ではない。

 そこで重要になるのが、実用期に入りつつあるビッグデータ(Big Data)・ソリューション、すなわち市場に散在・埋没している巨大なデータから有益な情報を収集・分析・可視化・活用する技術の活用である。第3回で触れたM2M(Machine to Machine)もこの範疇に含まれるこれからの戦略的な考え方であろう。コマツの建設機械稼働管理システム「KOMTRAX」に見られるように、それ自体が非常に強固なビジネスモデルのベースでもあり、なおかつ自社市場におけるさまざまな自社製品の実稼働状況データも収集できるという、極めて有用な手段である。

【社内外の経験・知見・ノウハウ・知恵を、コントロールしながら、必要に応じて、必要な範囲で共有・再活用できるようにする】

 川上機能で働く人たちがイノベーションを起こしやすくするには、そのための「環境や仕掛け」を作ることが必要であるが、それほど簡単なことではないし、それを「恒常的な仕組み」とすることはさらに簡単ではない。私自身も川上機能の一員だったのでよく分かるのだが、川上の人間は前述の通り「考え方の標準化」や「既成技術を使うこと」に対して抵抗感を持ち、自分自身の考え方・結果のオリジナリティに意義を見いだしがちである。また、そもそも川上機能の業務は非定常的な内容なので、標準化しにくく属人化しやすいものともいえる。

 しかし、これからの競争に勝ち抜くためには、考えることの内容や順番は個人差が出ない(ムラの出ない)ようにしていく必要があるし、経験・知見・ノウハウ・知恵などは個人の知から組織の知として蓄積し、共有活用できるようにする必要がある。そのために、日常業務の中に汎用的な仕掛け(本コラムの次回以降で“業務プラットフォーム“として紹介予定)を埋め込んで運用し、徐々に仕組み化していくことを提案したい。

 ただし、技術流出の防止に留意することも重要である。経験・知見・ノウハウ・知恵を共有する際、日本から海外の現地に必要な技術移転はするが、技術流出は確実に防げるようにコントロールできる仕組みを作っておくことである。

今までのPLMとは