著者のちきりん氏。証券会社勤務、米国大学院への留学、外資系企業勤務を経て早期リタイア。2005年春にブログ「Chikirinの日記」を開始。月間100万以上のページビューを持つ。
著者のちきりん氏。証券会社勤務、米国大学院への留学、外資系企業勤務を経て早期リタイア。2005年春にブログ「Chikirinの日記」を開始。月間100万以上のページビューを持つ。
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自分のアタマで考えよう、ちきりん著、1,470円(税込)、単行本、264ページ、ダイヤモンド社、2011年10月
自分のアタマで考えよう、ちきりん著、1,470円(税込)、単行本、264ページ、ダイヤモンド社、2011年10月
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 皆さんご存じの通り、日本のエレクトロニクス業界は大変な状況に陥っています。パナソニック、ソニー、シャープといった大手メーカーが、原子力発電所事故を起こした東京電力に匹敵するほどの巨額の損失を出しています。

 こうしたメーカーは、時代の変化に付いていけなくなっているのです。たいていの世代は、生きているうちに世の中が大きく変わる経験を1度か2度かはします。ところが、1940~1950年代に日本で生まれた人は、右肩上がりの成長しか知らず、大変化を経験していません。“自分のアタマで考え”なくても済んでいたのです。最悪なのは、この世代が日本の経済界を牛耳っていることです。時代の変化の中にありながら、「日本を変えたくない」と問題を先送りしています。

 日本の大学で理系の学部を卒業した人は、基本的にはすごく優秀です。そうした若者が、未来のないメーカーに吸い込まれている現状が残念でなりません。

 世界は既につながってしまったのです。国境は、もはや県境くらいの意味しかありません。“日本でのものづくり”にこだわる時代は終わりました。今、日本の工場で働いている人は工場がなくなると困るでしょうが、工場で働きたい人が今後、日本で増えるとは思えません。人口は今後ますます減っていきますから、人件費もさらに上がるでしょう。

 農業は大切な産業ですが、日本のように国土が狭い国が「農業で生きていく」と言うのは滑稽です。同様に「日本がものづくりで生きていく」と言うのは、もはや滑稽でしかありません。

 では何で生きていくのか。私は、日本の医療やシルバー産業、小売業や旅行業などのホスピタリティ系産業は、海外よりも明らかに優れていると思っています。こうした産業を海外に輸出すると共に、海外の人に日本にもっと来てもらって、そうしたサービスを利用してもらう。そこに、世界に対する日本の役割があると思います。

 エレクトロニクス産業は、今後もなくなることはないでしょう。世界には、テレビが欲しい人はまだたくさんいますから。ただ、日本にはもうテレビが欲しい人はいない。エレクトロニクス技術者は、製品のニーズがある海外に積極的に出ていって、そこで働くことを検討すべきだと思います。(談、聞き手は大森敏行)

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