現在、3次元CADは、自動車、家電製品、情報機器、ロボット、産業機械、生産設備、住宅設備、金型、ジグなど多くのものづくり企業で使用している。2次元CADで作図していた部品図や組立図が、部品モデルやアセンブルモデルに移行し、近年では、3D単独図の標準化への取り組みも行われている(日本自動車工業会/日本自動車部品工業会、電子情報技術産業協会)。本年5月19日に開催された設計フォーラム(主催:日本設計工学会、共催:経済産業省、日本規格協会)では、「3Dモデルデータセット(3D製図)を活用したものづくり―研究開発からアフターサービスまで―」をテーマにGPS(Geometrical Product Specifications:製品の幾何特性仕様)を3Dデータにどのように定義するか、その標準化への取り組みについて紹介があった。

 3次元CADでは、形状のデータが部品ファイルに、部品相互の空間的な配置と拘束がアセンブルファイルにそれぞれ定義される。そのため、アセンブリファイルは複数の部品ファイルとコンピュータの中でリンクしている。したがって、部品ファイルの名前や保存先のホルダーを勝手に変更してしまうと、アセンブリファイルから部品ファイルを参照することができない。3次元CADのこのような仕組みを理解しないと設計そのものが混乱してしまう。

 そこで、3次元CADを活用するための基礎知識として、まずは、形状モデリングの定義とプロセス、PDM(Product Data Management)と呼ばれるデータ管理、CADの運用環境であるネットワークとセキュリティ、製品の基礎データである断面特性(表面積、図心、断面2次モーメント)や質量特性(体積、重心、慣性モーメント)、強度解析や振動解析などのCAE、NC加工のためのCAM、3次元測定機などのCAT、3次元データによる検図や認証などを理解する必要がある。

 コンピュータが大型で汎用の時代は、情報処理技術者は特殊なものであった。そのため、情報処理技術者試験に要求される知識もそれを前提に問題が作成されていた。コンピュータが広く普及した現在では、だれもがコンピュータを使用しているので、情報処理に関する基礎的な専門用語を正しく理解することが始めに求められる。したがって、報処理技術者試験は、ITパスポートから始まり、スペシャリストの試験まで幅広いものになっている。

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 3次元CAD利用技術者試験も同じような考えで、実務者を対象とする1級(実技のみ)、設計の補助業務職を対象とする準1級(実技のみ)、基礎知識の理解度を認定する2級(筆記のみ)で構成されている。この試験では、単に3次元CADのオペレーション技能や作図時間の速さ、正確さを評価するばかりでなく、3次元CADによる設計業務に関連する周辺知識を活用し、実務において専門用語でコミュニケーションができる力を評価するためのものです。したがって、試験では、3次元CADの正確なオペレーションはもちろんのこと、図面の読図能力、周辺知識とその応用力を評価するための問題が作成されている。

 これまでに3次元CAD試験を受験した理由、年齢構成、受験者の業種と職種をそれぞれグラフに示す。受験者の年齢は20代と30代が全体の75%で、受験者の半数以上が自己啓発である。そして、受験者の業種は広範囲であることがわかる。3次元CAD試験の受験者は、毎年、増加している。これから、受験を考えている皆様に、本コラムでは、主に過去の試験問題を用いて、問題の意図や解答までのプロセスを詳細に解説するので、自己啓発の助けにしていただきたい。