電子機器受託生産(EMS)世界最大手のFoxconn(フォックスコン=鴻海)社とシャープが資本・業務提携を発表した2012年3月以降、日本発のフォックスコン関連ニュースを伝える中国・台湾メディアが増えている。

 5月下旬に取り上げられた記事の中で目立ったのは、日本経済新聞が5月24日付で報じた「シャープ、鴻海と中国で液晶生産 韓国勢に対抗 先端技術を供与へ」と題した記事。フォックスコンが中国四川省の省都(日本の県庁所在地に相当)に設立する液晶パネル工場に、シャープが先端技術を供与するというもの。生産するのはスマートフォンなどに使う高精細の中小型パネルで、2013年の稼働を目指すという。

 フォックスコンの成都パネル工場については、当社もウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)で12年2月末、「フォックスコン、成都に第6世代LTPS工場 高解像度パネルでAUO、サムスンと競合」として詳報した。これは成都市政府が設立したディスプレイ関連会社「天億科技」とフォックスコンが共同で設立するもので、LTPSガラス基板と基板用の金属酸化物半導体(IGZO)を生産。12年2月末に既に着工しており、2013年下半期の生産投入を計画している。

 フォックスコンは香港に隣接する深センにも、同市政府と共同出資でパネルメーカー「深超光電」を設立。第5.5世代のLTPS生産ラインが11年12月から稼働している。

 台湾紙『経済日報』(2月28日付)によると、フォックスコンは成都に「鑫成」「業成」というタッチパネルメーカー2社を設立済み。さらに成都や深センにLTPSパネル工場を設けることで、米Apple社から、スマートフォン「iPhone」やタブレットPC「iPad」のアセンブリのみならず、搭載する高精細パネルとタッチパネルの受注を増やし、主要サプライヤーの地位をさらに強固なものにしたいという意図があるのだろう。

 さて、成都のパネル工場にまつわる日経新聞の記事が呼び水になる形で、4月下旬に報道された中国メディアのある記事が最近、再び注目を集めた。

 それは、「フォックスコンがiPadを生産している成都工場で、人手不足からライン従業員に現地の公務員が駆り出されている」というもの。

 伝えたのは4月27日付の中国の経済紙『経済観察報』のニュースサイト。それによると、2010年にフォックスコンが成都に進出して以来、四川省では政府を挙げて、フォックスコンの従業員集めを全面的にバックアップしている。四川省の各市、県、村にはノルマが課され、党の役人や政府の公務員が採用の最前線に立ち、血眼になってノルマの達成に取り組んでいる。さらに、人集めの成績が、年度末の考課の一項目に加えられているというから驚く。目標を達成した者にはボーナスが支給されるが、果たせなかった者には罰金が科されるという。