(b)投資面においては、中国の「国産化率を高める」という方針に合わせて、外国資本や台湾の企業が研究開発の重要拠点を中国に設置することになる。第12次5カ年計画における中国IC設計産業の発展戦略を見ると、「ICチップの自給率が低い」という弱い立場から脱却するための産業政策が目立つ。スマートカード、通信、マルチメディア、安全・セキュリティ、電源の5大市場領域において、ICチップの国産化率50~70%という目標を設定している。また、「偽物の排除」や「政府購買」などの措置によって、中国IC設計会社のブランド価値を長期的に高める。

 (c)市場面においては、他に先駆けて規格制定できる機会を維持するために、中国ブランドのシステム会社の存在はさらに重要になる。システム会社と提携しているIC設計会社は、チップの受注が保障される上に、共に商品規格を制定する機会を先行的に持つことができる。台湾のIC設計会社にとっては、欧米企業から受注する従来型ビジネス・モデルの時代とは異なり、短期的には、海峡両岸(台湾と中国)共同の標準作りなどの課題に直面する。中国の標準規格に基づく市場が急成長するにつれて、長期的には、台湾IC設計会社に対する中国の顧客の影響力が増す。台湾企業は早急に対応しなければならない。具体的には、システム会社との商品の共同開発の強化や、商品開発全体にわたる提案などがある。

(2)台湾IC設計会社の課題解決の道

 中国市場は二面性を持つ。隠れ潜んでいる規則を通して、政府筋が中国IC設計会社を育成しており、その意図を無視してはならない。現在、台湾IC設計会社は技術力と製品化の能力においてまだ優勢を保っているが、もし中国市場への製品投入に偏り、先進技術の研究開発がおろそかになると、最後にはレベルアップできなくて淘汰されてしまう可能性がある。

 (a)台湾が現在取るべき戦略は三つある。一つは、海峡両岸協議や台湾行政当局によって整えられた環境を生かして、中国の新興産業に対して開放性を高めること。二つ目は、中国の自主標準提携や情報交流に積極的に参加し、台湾・中国共同の標準を制定すること。三つ目は、新興応用分野において、台湾と中国の企業が共に投資し、関係を深めることである。中国が、IC設計会社とシステム会社が緊密に結びつくことを奨励したり、自主標準制定などの政策誘導もしたりすることや、その結果として新興応用市場が急速に切り開かれることを前提に考える必要がある。台湾企業は、中国企業の部品購買力を重視し、中国システム会社との製品共同開発や技術提携の機会を把握してトータル・ソリューションを提案すべきだろう。ただし、中国企業との提携においては、台湾企業は知的財産権の保護に注意しなければならない。また、台湾行政当局は台湾企業と協力して、国際的に通用する台湾の技術を積極的に探索すべきだろう。

 (b)中長期の発展戦略は、以下の三つにまとめられる。一つは、システム育成、ソフトとハードの融合、応用人材の創新、能力創新の強化、法人機構などの国家資源の援助、科学専門計画などの援助、新商品応用環境の創新を推進することである。二つ目は、IC設計会社のグローバル化である。研究開発、マーケィング、人材を含め、国際化を図る。三つ目は、欧米の大学や研究室との交流を深めることである。コア技術を牽引できる地位を維持する。台湾が応用価値を創造していくことによって、中国市場が堅実な応用市場となる。台湾と中国のIC設計会社は、人材、知的財産権、技術、顧客が、互いに重なり合うようになるだろう。そこで台湾は、人材育成、研究開発の強化、国際化を着実に進めるべきである。