(b)産業の上流・下流へ拡大することを支持し、知的財産、金融および企業合弁の組み換えを支持する。半導体産業における従来の支援はIC設計企業とIC製造企業に対するものだったが、さらに一歩進んだ。封止、測定、設備、材料といった産業の上流・下流の企業にも、支援の対象が広がっている。また、中央予算内投資、産業投資基金、銀行ローン、および企業資金などの融資も、はっきりと提起されている。関連企業の租税優遇などの提供を除いて、知的財産権の抵当ローン、広域のリストラおよび合併を奨励している。

 (c)特定の発展プロジェクトを選び、科学技術の重大専門プロジェクトとして組み込む。半導体に関する科学技術の重大専門プロジェクトは、電子・情報分野、中核電子デバイス、ハイエンド用コア、基本ソフトウエア、LSI製造装置、セット工程(原材料または半製品を加工して製品化する技術)である。将来の重点発展プロジェクトの目標は、核心部品、CPU、操作システム、LSI製造装置、セット工程、無線LAN技術の標準化などがある。

 中国のIC産業にとっては、産業を中国大陸に根付かせることが目標である。キーコンポーネントとなるようなICチップを中国で開発し、中国が知的財産権を持つようにする。このようなICチップの自給率を3割まで拡大させる。中国政府は研究開発資源を新興産業領域の研究開発に投入することを計画している。IC設計産業を育成し、レベルを引き上げる。さらに調整機器、設計、製造、封止、測定などを含めた半導体産業チェーンの構築と密接に連結し、関連する政策を推進していく。こうした取り組みは、IC設計産業の発展にもプラスになると予想される。中国IC設計産業はIC産業全体の中でも、第12次5カ年計画の期間に最も速く成長するだろう。

中国の政策転換が、台湾の産業に与える影響

 中国の産業政策の転換によって、既に台湾のIC設計産業に影響が出ている。海峡両岸(中国と台湾)の競争力を比較すると、台湾企業は製品と技術、製品化の能力、製品動向の把握、国際的な連携などに優れている。近年は、徐々に革新的、独創的な製品を作れるようになってきた。また、台湾企業は中国の主要都市にマーケティング拠点を設置している。一方、中国のIC設計産業は、内需に恵まれている、第12次5カ年計画に基づく政策によって、中国のIC設計企業を育成し、産業界の合弁組み換えや国際交流を奨励している。また、より多くの留学生が中国に戻って起業するように招致している。ここ数年、中国のIC設計会社の国際的な連携はますます進んでいる。以降では、中国の政策転換がもたらす、台湾のIC設計産業への影響について見てみる。

(1)台湾のIC設計産業に与える影響と考察

 中国の中長期産業政策計画では、IC設計産業をはじめとする戦略的新興産業において、これまでの「産業と技術のキャッチアップ」から「産業と技術の牽引」へと、目標を転換している。コア技術の把握を含め、市場を健全に保ち、内外の事業環境に対応し、競合他社をリードする企業を育成するための政策を整備していく。このような中国の産業政策の転換によって、台湾の産業は以下の三つの面で影響を受けると予測される。

 (a)産業集積面においては、中国ブランドのシステム会社(機器メーカーなど)が手を結び、閉鎖的な企業間の結合が徐々に進む。中国の重大科学技術専門プロジェクトの4大技術路線は、戦略的新興産業と密接に関連しており、戦略的新興産業の発展のための技術革新を促すものである。これと同時に、中国は「半導体研究開発専門プロジェクト基金」などを設置し、省エネ半導体、ユビキタス・ネットワーク、カー・エレクトロニクス、三網融合(電話網、放送網、インターネット網の融合)、LEDの応用などの新興応用領域において、企業の研究開発を無償で援助している。上述のビジネス・チャンスの多くは、中国に強大なブランド・システム会社があることと関係している。現地のIC設計会社同士が手を結び、閉鎖的な企業間の結びつきが出来上がった場合、長期的には台湾のIC設計会社の市場参入の障害となり、不利な影響を受けるであろう。