3. 台湾との協業で有機EL開発と産業チェーン構築を狙う

 2012年3月に上海で開催された展示会「FPD China」では、台湾顕示器産業連合総会(Taiwan Display Union Association:TDUA)との共催で「海峡両岸AMOLED産業発展フォーラム」が開催され、中国と台湾の有機EL産業界の関係者が集まり、議論と交流を行った(関連記事『両岸OLED論壇「台湾との合作で「三星」越えを目指す「五星」、海峡両岸AMOLED産業発展フォーラム」』)。この会合の趣旨は、海峡両岸(中国と台湾)で協力して、有機ELの開発を加速させると共に、有機ELの川上(装置、部材)から川中(パネル)、川下(応用機器)までの企業を集積させて、産業チェーンを急いで構築したいということである。

 有機ELは、既に日本と韓国で長年の研究と実用化が進んでいる。中国も大学レベルの研究は行われており、一部の企業では生産を始めている(関連記事『日本の装置・材料への期待、「中国を舞台に有機ELで成功をつかもう」』)。しかし、全体的にはまだ十分な技術の蓄積はなく、中国単独での産業化は難しい。そこで選んだ相手が台湾である。台湾では企業レベルの開発もある程度進んでいる。海峡両岸(中国と台湾)で産業チェーンを構築することも視野に入れながら、有機ELパネル製造の体制を作りたいという思惑である。台湾でも2011年6月にTDUAが設立され、海峡両岸合作(台湾と中国の協力)のための交流が進められている(関連記事『台湾FPD業界の新組織「TDUA」、中国との交流へ精力的に動く』関連記事『上流に強い台湾と下流に強い中国が組む意義』)。こうした動きが加速され、今後はより実務的な交流が進むだろう。

 しかし、台湾も有機EL技術では日本や韓国の後塵を拝しており、海峡両岸(中国と台湾)が手を組んだだけでは、技術的な劣勢を挽回できないこともよく分かっている。この状況を解決する方法の1つとして、台湾と日本が協力するという考え方も出てきている(関連記事『日本の有機EL産業の再生策、台湾の活用を提案』)。台湾は韓国に対して強いライバル心を抱く一方で、日本に対しては熱いラブコールを送ってくる。「台湾と一緒にビジネスを立ち上げて、広大な中国市場に一緒に出ていこう」という呼びかけである。

 シャープと台湾Hon Hai Precision Industry社(鴻海精密工業,通称Foxconn)の提携や、「ソニーが台湾AU Optronics社と組んで有機ELテレビの量産を目指す」との報道が最近流れているが、まさにこのビジネス・モデルを実現する先駆者となり得るのではないだろうか。これの内容も含めて、今後のFPD産業について次回議論する。

【次回】「大型化」から「多様化」へ変化したFPD産業の成長モデル