このような中で、昨年(2011年)までテレビ用の大型パネル生産ラインの導入に躍起になっていた中国でも、一斉に中小型パネルが注目されるようになった。これまで検討されていた数々の大型生産ラインの投資案件は必ずしも順調には進んでおらず、むしろ最近ではモバイル機器市場を当て込んだ第5世代クラスの投資に関心が移っている。その中には有機ELパネル投資の案件も数多くある。

 こうした状況は、2012 China FPD Conferenceの基調講演に立った中国BOE Technology Group社の王家恒(Jia-Heng Wang)氏や中国Tianma Micro-electronics社の劉慶全(Qing-Quan Liu)氏の講演内容からも、はっきりと伝わってくる。BOE社は、2011年までは大画面テレビのための大型液晶パネル生産ラインの建設計画を前面に出した講演を公の場で行ってきたが、今回、大型パネルの話は全くせず、モバイル機器用の中小型パネルの内容に終始した。その中には、2015年に有機EL 製品を出荷するという計画もあった。

 もともと中小型に特化してきたTianma社も、中小型パネルの生産能力(3.5型換算)が2009年の400万枚/月から2011年には10倍の4100万枚/月に拡大したこと、さらに2013年には5200万枚/月まで拡張する計画について紹介した。有機ELパネルについても積極的な姿勢を見せている。既に、上海に第4.5世代基板による有機ELパネル試作ラインがある。現在はアモイに第5.5世代基板による低温多結晶Si(LTPS)TFT生産ラインを立ち上げており、今後さらに同敷地内に有機EL パネル生産ラインを導入する計画を持っている。

 企業だけでなく、業界組織も動き始めた。2011年5月に深センで開催された展示会では、「中国OLED産業連盟」の設立を大々的にアピールしていた(図2)。中国OLED産業連盟は、中国工業和信息化部、国家発展改革委員会の指導の下で、中国国内19社の企業および組織が共同で創立した組織で、2011年6月2日に広東省恵州で正式に発足した。パネル・メーカー、材料メーカー、装置メーカー、セット・メーカーなどが参画する非営利的な全国組織である。中国の有機EL産業の発展戦略と課題の研究、産業チェーン、特許の保護と共有、標準化の研究と制定、情報収集と整理などに重点的に取り組み、企業の発展のために指導し、政府の政策に諮問することを役目としている。

図2 深光電顕示週(CODE)2011 の展示会場に出展した「中国OLED産業連盟」のブース
連盟会員企業のうち14社が個別に展示した。この展示会は、2011年5月初旬に開催されたものだが、当連盟の正式発足日は2011年6月2日である。
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