FPD産業は、現在多くの困難に直面している。FPD産業発祥の地である日本がその発展のスピードについていけなかったことは、直近の再編劇の数々を見ても分かる。今後ばく大な規模のパネル生産を担うと見られる中国も、決して安穏としていられる状況ではない。むしろ、向こう数年間は、中国のFPD産業といえども期待されるような成長をするのは難しいだろう。このようなことを、中国内のコンファレンスや展示会などのイベントや現地企業を見聞きしていて強く感じる。

 中国FPD産業は今、必至に方向転換をしようとしている。中国が目指しているのは、(1)国際化を推進して技術の底上げを図る、(2)FPDテレビ市場からモバイル市場へ戦略的に投資の重点を移行する、(3)中国・台湾海峡両岸の協力で技術発展と産業構造の整備を加速させる、の3つである。しかし、実際に中国現地で情報を見聞きすると、どれもそれほど容易ではないことが見えてくる。

 一方、日本のFPD産業にとって、現在の状況は日本の地位を取り戻す絶好のチャンスといえる。FPDの技術と製品は、これからも進化し、発展していく。そのためには、さらなる技術開発と新しい製品アイデアが必要になる。これらは、日本が最大の強みとする部分である。日本は、夢のあるFPD製品の実現に向けた戦略を再構築し、既にアジア各地に広がった生産体勢を活用しながら、FPD産業の価値を高めるためのリーダーシップを取っていくことが重要である。FPD産業発祥の地である日本には、この産業を次のステップへ高める責任がある。

1. 国際化に突き進む中国FPD産業

 2012年3月21~22日に上海新国際博覧中心で開催された「2012 China FPD Conference」(主催:SEMI、開催プログラム)では、ディスプレイ関連で最大の学会「Society of Information Display(SID)」が共催者となり、SIDのPresident のMunisamy Anandan氏がオープニング挨拶に立った。Anandan氏は、中国FPD産業界の発展のためにSIDが積極的に支援していく姿勢を示した。中国側からも「SIDとの協業で最先端技術の情報をいち早く取り上げ、レベルアップにつなげていきたい」との歓迎を受けた(図1)。

図1 「2012 China FPD Conference」のオープニングの様子
共催者であるSIDのPresident のMunisamy Anandan氏が、中国FPD産業にエールを送った。
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 SIDは、ディスプレイ産業の黎明期から先端的な研究・開発の場を支えてきた国際的な組織であり、中国もこのSIDの力を借りて技術レベルの底上げを図ろうとする姿勢が見て取れた。その背景には、以下のような事情がある。