仏ダッソー・システムズでエグゼクティブ・バイス・プレジデント(上級副社長)を務めるモニカ・メンギーニ氏
仏ダッソー・システムズでエグゼクティブ・バイス・プレジデント(上級副社長)を務めるモニカ・メンギーニ氏

スマートシティやスマートグリッドといった市場では、業界横断的な取り組みが不可欠だ。だが、実際には企業間の壁は高い。そうした中、3D(3次元)CADデータを核にソーシャル連携などに取り組む仏ダッソー・システムズでは、業界横断をうながす研究開発を進めているという。同社のエグゼクティブ・バイス・プレジデント(上級副社長)であるモニカ・メンギーニ氏に、同社のスマートシティ分野への取り組みを聞いた。(聞き手は志度 昌宏=日経BPクリーンテック研究所)

――スマートシティ分野に取り組んでいると聞く。

 当社の研究開発部門の一つである「IDEAS Lab」において、スマートシティの将来像を描き出そうとしている。当社がカバーする業種ごとに保有されている知識の集積を図り、取りまとめているところだ。以前からサスティナブル(持続可能性)をテーマにしてきたが、1年ほど前からスマートシティに切り替え取り組んでいる。

 既にエネルギーや建設、製薬など業種ごとの取りまとめは終えている。それらを統合したスマートシティ全体の将来像を、1年後をメドに提言したい。こうした将来像があれば、スマートシティの実現に向けた政府や自治体との交渉も可能になる。

 最近は多くの企業が、スマートシティやグリーンプラネット、サスティナブルといったキーワードを掲げているが、多くはマーケティングの要素が強いのではないだろうか。ダッソーでは、IDEAS Labをはじめ、マーケティングを超えた取り組みを進めている。それが、私が消費財メーカーのP&Gや広告代理店のSaatchi&Saatchiから当社に移籍した理由の一つでもある。

――スマートシティにおける3D関連技術の役割は。

 一つは、リアルなシミュレーションを可能にすることだ。都市インフラの最適化を図るには、需要がどれくらいあるのかを把握したうえで、種々の資源を配置していかなければならない。そのためにはデータモデリングとシミュレーションによる事前の検証が不可欠だ。

 3D関連技術は既に一般化し、どこでも誰もが利用できるようになった。ただ残念ながら、これまでの3D関連技術の利用は業界内に閉じていたと言わざるを得ない。しかし、今後は複数の業界が持つ複数のデータを組み合わせたデータ活用が必要になってくる。

 例えば、自動車によるCO2排出量を考えてみると、車単体としての燃費性能をシミュレーションしても不十分だ。都市を自動車が実際に走行した場合のCO2排出量を求めなければ、都市としてのCO2排出量を総合的に管理できない。そこでは、道路の勾配や凸凹の有無などを含めた地勢情報と、エンジンの燃料消費特性を組み合わせたシミュレーションが求められる。

 スマートグリッドの分野でも、消費量に応じて、どんな地域にどんなエネルギー源を配置するのが最適なのかが知りたいはずだ。欧州のあるエネルギー会社に向けて、ビッグデータを扱う情報検索ソリューション「EXALEAD」を使った「Smart City Energy Sourcing」と呼ぶアプリケーションを提供した例がある。ビル単位などでエネルギー消費量を可視化することで、各種エネルギー源の配置を検討するものだ。