0.3Hzの周波数変動があったら蓄電池作動

 沖縄電力は日経BPクリーンテック研究所の取材で、上記の(1)と(2)の成果について具体的なデータを明らかにした。

 まず出力変動は、蓄電池を再生可能エネルギーの発電設備ごとに個別に置くことで、その設備の出力変動をローカルに押さえ込めることが確かめられた(図3)。例えば太陽光パネルが十分に発電しているときは蓄電池に充電し、急に雲がかかったり雨が降ったりして出力が低下したら放電する。これによって、太陽光と蓄電池の出力を合わせた「合成出力」を平滑化できた。

図3●出力変動抑制効果の事例  2010年11月2日における実績である。赤い線が太陽光発電の出力。出力が低下すると、青い線で示したNAS電池の出力を上げるという制御をすることで、合成出力を安定させた。 (データ:沖縄電力)
図3●出力変動抑制効果の事例  
2010年11月2日における実績である。赤い線が太陽光発電の出力。出力が低下すると、青い線で示したNAS電池の出力を上げるという制御をすることで、合成出力を安定させた。 (データ:沖縄電力)

 周波数変動についても、よい成果が得られた(図4)。太陽光発電の導入前に、風がなく風力発電設備も稼働していない状況下では、周波数の変動幅は60Hzを中心にわずかな量に収まっていた。ディーゼル発電機の出力も変動せずに安定しており、効率的な運転になっている。しかし、太陽光発電または風力発電がそれぞれ稼働すると、周波数が0.1~0.2Hz近く上下に振れるようになってディーゼル発電の運転も小刻みに変化し、トータルでは0.3Hz以上変動することが分かった。

図4●周波数変動抑制効果のイメージ図  実績データは未公表である。 (データ:沖縄電力)
図4●周波数変動抑制効果のイメージ図  
実績データは未公表である。 (データ:沖縄電力)

 実系統だけに、0.3Hzを超えるとさまざまな支障が出てくる。そこで、設備ごとの個別ではなく系統側に蓄電池を置き、その蓄電池で系統全体に生じた周波数変動を直接抑制するようにした。これによって変動幅がほぼ問題ないレベルまで抑制できることが確かめられた。実際には、0.3Hzを上回る変動がありそうな場合に蓄電池を稼働させるという運用にしている。「蓄電池で安定供給を確保しながらでないと、実系統でこうした実験はできなかった」(渡久地氏)という。

 宮古島では、冷房のニーズから夏場は約5万kWの電力需要があるものの、冬場は2万5000kWに減少する。同社は、通年で再生可能エネルギーが系統網に与える影響と抑制効果を検証し、2012年3月時点で「技術面では、当初に意図した通りの動きにほぼなっている」(渡久地氏)と判断している。

 同社によると、前述のように出力変動は再生可能エネルギーの設備ごとに蓄電池で制御するので確実に平滑化できるものの、実際には遠隔にある各蓄電池の状況をネットワークを介して把握した上で制御する必要があるので、通信設備なども併せて設置しなければならない。これに対して、周波数変動は系統側で一括して制御するので、複数の再生可能エネルギー設備がある場合でも低コストで抑制できる。ただし、周波数変動抑制は系統規模が大きくなると効きにくくなる可能性もあり、どちらを優先するかは離島の電力状況によって選ぶことになるという。