沖縄電力が宮古島で行っている離島向けマイクログリッドの実証事業が成果を出し始めた。発電量が不安定になりがちな太陽光発電などの再生可能エネルギーを大量に導入しても、蓄電池をうまく活用すれば電力供給系統(以下、系統)の安定化が可能なことが実際のデータで確認されたのだ。

 計算機によるシミュレーションや小規模な実験はこれまでにもあったものの、人口5万5000人規模で実際に運用している系統網において、蓄電池による系統安定化の効果が確認されたのは世界でも初めて。沖縄電力は、2013年までに蓄電池の活用法などを詰めて、同社管内のほかの離島や、海外の離島への展開を図る考えだ。

再生可能エネルギーを大量導入

 この実証事業は、資源エネルギー庁の「離島独立型系統新エネルギー導入実証事業」の一環で進められている。電源のほとんどをディーゼル発電機に頼る離島で、低炭素化を図るために太陽光発電などの再生可能エネルギーを大量導入する際の問題点を洗い出し、解決に向けた技術を開発する。具体的には、蓄電池やEMS(エネルギー・マネジメント・システム)の導入によって、再生可能エネルギーの出力変動が系統に及ぼす影響を低コストで抑えることがメーンテーマとなる。

 宮古島には、ディーゼル発電機を中心に7万4000kWの火力発電設備、4200kWの風力発電設備が設置されていた。そこに2010年10月に4000kWのメガソーラーが加わり、稼働を開始した(図1、図2)。全体の系統規模は約5万kWなので、太陽光発電の比率は8%、風力発電も加えた再生可能エネルギーの比率は16%になる。

図1●宮古島に設置されたメガソーラー全景 (写真:沖縄電力)
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図2●宮古島に設置されたメガソーラーと風力発電設備 (写真:沖縄電力)
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 火力発電および既設の風力発電設備は22kVの高圧送電系統につながっており、メガソーラーの出力についても昇圧することで22kV系統に流している。そこに、500kWのNAS(ナトリウム硫黄)電池パッケージを8台、つまり合計4000kW(=4MW)分をつなげて充放電できるようにしている(このうち1MW分はスイッチで6.6kV系統に連結)。

 この実証研究は、次の4項目の検証に分かれている。

(1)出力変動の抑制(太陽光発電の出力変動を蓄電池で抑える機能と最適な蓄電池容量の検証)

(2)周波数変動の抑制(系統全体の周波数変動を蓄電池で抑える機能と最適な蓄電池容量の検証)

(3)スケジュール運転(気象データから太陽光発電量を予測し、蓄電池とディーゼル発電機の効率的な運用方法を得る)

(4)最適な制御方法(太陽光発電や蓄電池をつないだ状態で一般家庭や商業施設などに配電したときの電力負荷を模擬し、さまざまなパターンにおける負荷の平準化方法を検証)

 現時点までに、(1)と(2)について「技術的なめどが付いた段階」(沖縄電力研究開発部副長の渡久地政快氏)であり、(3)と(4)については2012年度に設備導入を終えてからの実験スタートになる。