単純に並べて売れるものは、空気清浄機などの日本製小型家電など。鉄瓶は富裕層にコレクターが多いから売れる。男性が相手であれば、「夜元気になる」系のサプリメントは、サンプル渡して効果があったらすぐに売れる。前の日にサンプルを渡せば、次の日、箱ごとたくさん買っていく。

 どうやら、からだにいいモノ、おいしいものなど、すぐに体感できるものの方が重宝されるようだ。

 そして、売る時に「おー!」って思わせる仕掛けがあると売れる傾向がある。陶器だと、作家もので、将来値が上がる可能性があるみたいに思わせるとか。ストーリーが大切だ。

 日本のお茶は確かに人気があるけど、お茶パックで売る方がいい。以前、日本茶を上海伊勢丹で売ったとき、「パックで売っているものはないの」と何人もの中国人に聞かれた。洗いながら茶葉を捨てるのが面倒ということだ。パッケージを日本の和紙とかを使ったものにしてあげるとギフト商材になるからさらにいい。お抹茶も、ちゃんと中国人に受ける商材に仕立てればギフトとしても家使いとしても売れる。

 つまりは、ただ並べて置いても売れるという日本商材はある程度決まっていて、大多数のものは何かしら工夫をして販売しないと売れないということらしい。値札を工夫してみたら、かえって売れなくなったという話も聞いた。

 中国人はとにかく値切る。「半値8掛け2割引き」という感じに値切り倒してくる。日本の商品が高いという思いがあるのだろうか。ではということで、最初から安くしているとアピールするために、定価を書いた札に×を付けて、3割引き、4割引きの値段を明記。これで、十分安いしお値打ちものとして売れるだろうと期待した。

 ところが売れない。中国人の価値観では「自ら値引きするものは、きっと売れ残りの悪いモノではないか」と疑ってしまうようだ。上手く売るには、まず定価を提示して、相手に値切られたら「あなただけに特別な価格でお売りします」とばかりに、値切りに応じるのがいいようだ。まさに「For You」で個人的に特別扱いされたという優越感を喜ぶ中国人が多いという。だから、面倒でも、値切られるように定価と売価をコントロールして対応する必要がある。

 商材をさらしておけばなんでも売れるわけではない。磁気ネックレスが売れたとか、南部鉄瓶が売れたとかいう話は、たくさんの失敗のなかの数少ない成功例と考えた方がよさそうだ。最近、中国人に色々な商材を売ろうと、中国のネット販売サイトに日本の商材を掲載するサービスが目立つ。「30万人が見ている」「100万人が毎日購買している」といった広告文句が踊る。

 しかし、著名中国販売サイトを使ってみたものの「まったく売れなかった」「多額の手数料を払い在庫も没収されてえらい目にあった」といった類の話も多い。よく考えてみれば、当然である。日本では、どんな素晴らしいネット販売サイトに掲載しても、きちっとしたマーケティング、セリングをしなければ商品は売れない。中国だって同じなのである。

 中国人の心をつかみ、商材に合わせたストーリーを作って売り込んでいく。試して売れなければ「何故売れなかったのか」と反省し、顧客の声を素直に聞き、さらに改善して売っていく。このきめの細かい繰り返しがなければ、売れない。それは中国人でも日本人でも変わらないということだ。

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