「磁気ネックレスが飛ぶように売れちゃって」

 中国人観光客が日本のツアーに来て、移動のバスの中で日本の商品を次々に買っていく。なんと、この1回のツアーで100万円も儲かったとのこと。健康にいいという磁気ネックレスが1個1万円。これが中国人にとって高いのか安いのか分からないが、誰かが買い始めるとどんどん売れていく。

 買い尽くす中国人。中国人御用達の銀聯カードは、銀座のどこの店でも使えるようになった。まさに、経済力みなぎる中国人が日本でお土産をなんでも買っていく光景だ。

 不動産が売れた。別荘が売れた。車が売れた。しかも新車の高級車。週刊誌はこう書く。中国人に日本の土地をどんどん買われていくのは日本の防衛上の問題だと。いずれにせよ中国のバイイング・パワーはすさまじい。

 めったに海外に出られない中国人観光客は、どんな天候でもスケジュールを変えることがない。だから、地方の観光土産店や旅館は中国人観光客を重宝しているという。「雨の日でも、雪の日でも必ず来ていただけますから」とは、富士山五合目の観光土産店の店主のコメント。日本人相手であれば、雨風の日は閑古鳥が鳴く。でも、中国人は必ず来る。天気はともかく、「富士山に来た」という事実に満足するのだという。そして、富士山土産をどっさり買っていく。

 そんな話を聞いて考えた。私は度々、中国人を日本に迎え入れている。そんな彼らに色々売ってみようかと。どれだけたくさん売れるのだろう。そんな期待に胸を膨らませながら色々なモノを売ってみた。

 東京で下町の店を貸し切って、中国人観光客向けに取りそろえたのは、「日本風のものが喜ばれる」ということで、着物、簪、櫛、扇子、日本人形。中国のお茶よりも日本のお茶の方がおいしいという話も聞いていたので、高級な日本茶。南部鉄瓶は有名らしいからこれも取りそろえる、など様々。店は、なんだか成田空港のスーベニアショップの様相となってきた。これで、一攫千金。どんどん売れたらいい利益になるなと、ほくそ笑むのであった。

 いよいよ中国人観光客の入場。今回の客人は、中国中堅企業の社長さん達20名ほどの日本研修旅行の一団である。軽くお茶を振る舞い、さて様々に並ぶ日本のお土産を売り込むのだが、これが全然売れない。色々手に取ってみているのだが、なかなか買おうとしない。結局売れたのは、南部鉄瓶4つだけ。やっぱり南部鉄瓶は強い。でも、どうしてその他のモノは売れ残ってしまったのだろう。磁気マグネットは飛ぶように売れると話を聞いていたのだが。何がいけなかったのか。

 中国人バイヤーのプロに聞いてみた。要点をまとめると、以下のようなことらしい。