まぁ実際には、なかなか簡単には話が進まないのも事実です。前回も書いたように、「社会貢献」に対して社業とは相容れないものと社内では刷り込まれていることが多いからです。「部活」で得たアイデアを基にした企画で上司や役員の説得をし、予算を獲得する際には、正面突破では理解を得られないというのが現実でしょう。

君の考えも解らないわけではないが…
(つまり検討するに値しないという意味)
当社で取り組むには課題として大きすぎるのでは…
(つまりリスクが大きいのでやらないという意味)
先行事例との差はなんだね…
(つまり競合が気にはなるが真似は嫌だという意味) 

などなど。会社勤めの者には容易に想像できるシーンです。

 私が、ソーシャル・リーマンズとして尊敬する人々と話していて、いつも感心するのは、上司を説得する際の言葉使いのうまさです。例えば、「社会貢献」と言って通じなければ別の言葉で説得するのです。それでも、本質は外しません。

常務、今回は“社会ニーズへの対応”に向けた、当社の新しい取り組みに関して、ご意見をいただきたいのですが
ほう。社会ニーズへの対応かね。それはどういうことだ
実は、会社を上げた課題になっている新興国ビジネスでは、BOP市場が突破口になりそうなのです。それは、…
なるほど! 面白いビジネス機会を持ってきたね。ポイントから、まず説明してくれるかな…

 ちょっと出来過ぎですが、「社会貢献」と言いたいところを、「社会ニーズへの対応」と置き換える。そういうちょっとしたプレゼンの妙によって、同じ内容でも与える印象が変わるということですね。

決して、言葉遊びではない

 言葉遊びに見えるかもしれません。でも、相手を説得する際にうまく表現することが大切であることは、洋の東西を問わず共通です。

 こうした言い換えを使いこなす人々は、神から与えられた才能があるわけではないと思うのです(中にはそういう人もいると思いますが)。 日頃から「会社」と「部活」(つまり社会)の間を何度も行き来する中で異なる視点を使い分ける経験を多く持つからだと、分析しています。同じ事象をあっちからこっちから見たり聞いたり、足したり引いたりしているうちに、さまざまな視点で一つの事象を伝えることが自然に身に付くのでしょう。

 仕事振りを変えるというのは、これまでと視点を変えるということですから、会社の中で新しい視点をもって仕事を進める人が増えてくると、会社全体が大きく変わる可能性が高まります。これによって、会社への貢献が社会貢献につながれば、働いていて楽しい世の中になりそうではありませんか。

 前回と今回にわたって紹介したNPO団体は現実に存在しています。そして、企業との連携も少しずつ本格化し、「ソーシャル・イノベーション」を生み出しつつあるのです。各団体のWebサイトを眺めてみるだけでも、新しい取り組みを知る機会につながります。そのワンクリックが、あなたが今、会社の中でもんもんと悩んでいる内容の解決につながるかもしれません。   

 「うーん、そうは言っても身体が動かないなぁ…」。そうですね。普通は、そうだと思います。そういう方のために、今後もコラムでは実際のソーシャル・リーマンズを紹介していこうと思います。「乞う、ご期待」ということで。