こうした活動が広がる背景には、現地での社会貢献活動が、企業として新興国の市場を知ることや、CSR(企業の社会的責任)活動につながるという考え方があるのでしょう。このプログラムは、「クロスフィールズ」というNPO団体との恊働によって実現しました(Webサイトはこちら)。この団体は、企業の若手人材を途上国の社会貢献団体に長期で派遣し、人材育成につなげるプログラムを提供しています。同団体はこのプログラムを「留職」と呼んでいます。

 以前では考えられなかった、大企業とNPOのコラボレーションは現実になっているのです。こうした協働は、会社内、あるいは社外であっても「身内」だけの集まりでは、なかなか実現しないでしょう。社外に顔が利く人事担当者が、他社の人材育成部門の担当者と意見を交換したとしても、具体的な解決策のイメージが浮かぶことはほとんどありません。そんな時、日ごろの「部活」が役立つ可能性は高い。「NPOからこそ学ぶことが多い」というアイデアは、担当者の実感が伴うものでなければ、決して企業の中で具現化できるものではないはずです。

 パナソニックの例は、将来の新興国での実ビジネスへのつながりを期待している共に、CSR活動の一環でもあります。企業イメージを高めるという観点では、部活がブランド・イメージの向上策の発想につながる可能性もあります。

おもてなしの気持ちがつながる

 例えば、「えがおつなげて」というNPO団体をご存じでしょうか(Webサイトはこちら)。農業をはじめとした地域共生型のネットワーク社会を創ることを目的として活動している団体です。都市と農村を結び付けるさまざまなイベントを実施していて、いくつかの企業と協働プロジェクトを進めています。

 この団体は三菱地所と恊働で「空と土プロジェクト」を手掛けています。農村の遊休地を開墾し、その田んぼで採れた米で「丸の内」という銘柄の純米酒を作ったり、地域(山梨)の食材フェア「おあんなって! 山梨」を東京で実施したりするような取り組みです。このプロジェクトでNPO団体と三菱地所の関係だけではなく、社員個人や地域住民、企業の顧客の間で「個人と個人」の信頼関係を築く効果が上がっているそうです。

 「おあんなって! 山梨」ですが、事前に食材発掘ツアーとしてシェフに現地に足を運んでもらい、「これは」と思う食材で地元の住民も舌鼓を打つ新しいメニューが生まれました。個人のつながりがあるからこそ、通常のPRイベントとは異なる、「想い」のこもったフェアになり、大成功を収めました。ちなみに「おあんなって」は「どうぞお召し上がりください」という意味だそう。まさに個人のおもてなし感覚のフェアでした。

 こうした活動が同時に、不動産会社としての三菱地所の本業との関連も生み出しています。

 関連会社の三菱地所コミュニティが管理するマンションの居住者向けに提供する「田植え体験ツアー」は、毎回応募者が殺到しています。マンション住民間のコミュニティ形成に役立っていることはもちろん、都会に住む居住者の農村志向を満たす付帯サービスとしても価値が高まっているそうです。あるいは、三菱地所の社員が、地域の方と一緒にワークショップを開催し、間伐材の有効活用アイデアを具体化。“山梨県産材”を使ったツー・バイ・フォー住宅の完成にもこぎつけています。