中国人だろうと他の新興国の人だろうと、「どうせパソコンを買うなら、できるだけ長く使えるパソコンを使いたい」と思っている。Atom搭載パソコンやCeleron搭載パソコンよりも、ミッドレンジのパソコンが欲しいのだ(関連記事)。ただ、それは個人ユースの話である。ビジネスユースの場合は、国・地域によって状況は異なる。今回は、企業向けのパソコン事情について紹介したい。

 調査会社の米IDC社の中国法人であるIDC中国は、「2012年の中国のパソコン出荷台数は前年比9%増の7894万9000台に達する見込み。大都市でも中都市でもなく、経済発展する小都市や農村部の中の中心都市がパソコン市場でホットになる」と予想している。中国は米国を上回る世界最大のパソコン市場になりそうだ。ただ、シンクライアントの2012年の出荷台数は71万台にとどまると予想している。中国では個人情報漏洩やハッカーの攻撃が報道されており、こと前者に関してはこの1~2年で話題になっている。このように、セキュリティ対策が叫ばれる中でも、シンクライアント市場が伸びる気配はない。

 もはや中国のほとんどの企業がパソコンを導入している。企業どころか個人商店でも当たり前のようにパソコンを導入している。しかし、シンクライアントを導入している企業や教育機関はほとんど見たことがない。

 民間だろうと公務員だろうと、中国の組織での上下関係は絶対的である。従って、誰もが、小さくてもいいから会社やショップのオーナーになりたがる。管理者と平社員の間には、配備されるパソコンにも差がある。数年前よりは幾分ましになった感があるが、“エラい人”は、パソコンを使いこなせようが使いこなせまいが、「ThinkPad」や「VAIO」や「MacBook」を自ら選び経費で買っていく。仕事で使わないのに、なぜかデジタル一眼レフカメラまで買うことはよくある。一方、“エラくない人”には自作パソコンがあてがわれる。

 エラい人の気まぐれに加えて、中国における会社運営では定番の問題となる「社員の自信過剰からくる離職率の高さ」ゆえに、人は入ってきたり出ていったり。だから企業がまとめてパソコンを購入することもあるが、企業ユースとはいえパソコンを単品で購入することもよくある。加えて、中国で働いている人はご存じだろうが、「差し迫った仕事がなければパソコンで遊んでいい(最近はスマートフォンも加わりつつある)」という習慣もある。例えば中国の調査会社「易観国際(Analysys International)」によると、SNSにアクセスする時間帯は勤務時間帯に集中しているという。また調査会社「Insites Consulting」のSNSに関する調査レポート「Social media around the world 2011」によると、調査対象国・地域の日欧米豪中とブラジルおよびインドの中で、中国だけが勤務中にSNSにアクセスしている割合が高い。

会社内で趣味の動画を見ている従業員
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ネットブックをPOS代わりと暇つぶしに使う食堂
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