環境省は、深刻化する地球温暖化問題に関する最新情報をまとめて、広く一般に知ってもらうため、パンフレットとして公開を始めた。

 今回作製したパンフレットは2種類。『STOP THE 温暖化 2012』と『温暖化から日本を守る 適応への挑戦 2012』である(図1、図2)。それぞれ、パソコンなどに無料でダウンロードして閲覧できるPDF形式のファイルを用意し、環境省のホームページで公開した(URLはそれぞれhttp://www.env.go.jp/earth/ondanka/stop2012/
http://www.env.go.jp/earth/ondanka/pamph_tekiou/2012/)。このほか、環境省は両パンフレットの印刷物もそれぞれ5000部ずつ制作しており、今後、同省が開催するイベントなどで配布する。

図1●『STOP THE 温暖化 2012』の表紙。環境省の地球環境局が企画し、国立環境研究所の監修の下、日経BPクリーンテック研究所が編集
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図2●『温暖化から日本を守る 適応への挑戦 2012』の表紙。企画・監修は環境省、内閣府、文科省、厚労省、農水省、国交省、気象庁の各省庁で、日経BPクリーンテック研究所が編集
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 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)による報告や学者による論文は、専門家でないと読みこなせない場合が多い。そこで、最近得られた科学的知見や行政の取り組みなどに関する情報を、グラフや図などを多用しながら平易な構成でまとめた。両パンフレットが紹介している最新の知見からは、地球温暖化問題の深刻な状況を感じ取ることができ、私たち国民一人ひとりが問題の改善に向けた行動をとるときの指針となる内容も盛り込んである。

科学的知見を得たいなら『STOP THE 温暖化 2012』

 2つのパンフレットのうち、『STOP THE 温暖化 2012』は、「地球温暖化」「科学が明らかにした実態」「このままでは地球が危ない」などの章から構成されていて、主に地球温暖化問題の科学的な知見がまとめられている。IPCCによる第4次評価報告書に掲載された情報の中から、特に重要なものをピックアップしてある。また「北極海の海氷の急激な減少ぶり」「絶滅の危機に瀕(ひん)している日本のライチョウ」などの最新情報も知ることができる。

 同パンフレットは環境省が2008年に公開した『STOP THE 温暖化 2008』の改訂版という位置づけ。「二酸化炭素の国別排出量」や「日本の温暖化ガス排出量」などに関するデータも最新のものに更新されており、資料としてこうしたデータを参照したい場合にも便利だ。さらに、温暖化ガス観測技術衛星「いぶき」による研究成果や、環境省による取り組み「うちエコ診断」などについても紹介している。

地球温暖化対策の「適応」とは

 地球温暖化対策は大別して2つある。温暖化ガス排出量を抑制して温暖化の進行を阻止・減速させる「緩和」と、社会インフラの調整や農作物の改良などによって温暖化する気候に対応する「適応」である。『温暖化から日本を守る 適応への挑戦 2012』は、このうちの「適応」に関して、現在、日本で進められている様々な取り組みをまとめたものだ。

 「進む、わが国の適応」「国際的な取組」「緩和と適応が融合した社会の実現」などの章から成る。「適応」を目指して実施されている研究やその成果について、防災、沿岸大都市、水資源、食料、自然生態系、生活、健康などの分野別に解説している。

図3●『温暖化から日本を守る 適応への挑戦 2012』の中身の例
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 同パンフレットは、2009年に公開した『温暖化から日本を守る 適応への挑戦』の改訂版だが、その後大きく盛り上がっている「エコハウス」「スマートシティ」といった動きの最新状況や、自治体ごとに行っている「適応」への具体的な取り組みなどを書き込んである。一般の人々への広報・啓発だけでなく、環境省が自治体の地球温暖化対策の担当者に情報を提供する際のツールとしても活用するという。

この記事は日本経済新聞電子版日経BPクリーンテック研究所のコラム「クリーンテック最前線」から転載したものです。