電子機器受託生産(EMS)世界最大手の台湾Foxconn(フォックスコン=鴻海)社が、シャープと資本・業務提携するという超弩級のニュースが話題を独占した3月下旬のEMS/ODM業界。フォックスコンを率いる郭台銘董事長が韓国Samsung Electronics社への対抗意識をむき出しにしていることから、「日本・台湾連合VS韓国」という図式で語られることの多かったこの提携だが、4月に入っても、同じ構図のニュースが続くことになった。テレビ事業のテコ入れを図るソニーによる台湾、中国業者との提携話だ。

 一つはソニーがパネル大手の台湾AU Optronics社(AUO=友達)と、アクティブマトリクス式有機EL(AMOLED)テレビ製造で合弁も視野に入れた提携交渉を進めているというニュース。さらに、中国家電大手でテレビシェア首位のHisense社とは、中国での販路拡大のほか、テレビの生産委託で交渉しているというもの。いずれも日本発のニュースだが、これを報じた中国、台湾メディアはおしなべて、「日中台連合でSamsungに対抗する」という日本の論調を前面に出して伝えていた。

 このうちソニーとAUOとの提携については、台湾メディアは日本に先駆け、3月下旬ごろから報じ始めていた。当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)でも、「ソニー、台湾AUOに技術者派遣しAMOLEDとIGZO開発か」(3月19日付)、「AUO、12年Q2からソニーの携帯向けにAMOLEDパネルを量産・出荷」(4月5日付)として伝えている。

 報道をまとめると、AUOがAMOLED技術の開発に着手したのは約2年前のこと。2012年になると2月に出光興産と有機EL(OLED)事業で戦略提携を締結。出光から高性能OLEDの材料提供のほか、デバイス構成の提案を受けることになった。そして4月上旬、台湾の市場や業界で、AUOがAMOLED生産の歩留まりで大きな成果を挙げ量産化のメドがつき、12年第2四半期からソニーに対しスマートフォン用4.3インチAMOLEDパネルの供給を始めるとの情報が流れた。

 台湾の経済紙『工商時報』(4月5日付)は、AUOが台湾にある第3.5世代工場と、シンガポールの第4.5世代低温多結晶シリコン(LTPS)パネル工場で、AMOLEDパネルの生産を行うとしている。生産の方式としては、第3.5世代工場のガラス基板が1枚あたり4.3型パネル50枚分、第4.5世代工場は同70~75枚分の切り出しが可能だとしている。

 これに対してやはり台湾紙の『経済日報』(4月19日付)は、ソニーのエンジニアがAUOの第6世代工場に常駐、共同で大型AMOLEDパネルの開発に当たっているとした。開発に成功すれば、さらにサイズの大きい第8.5世代工場へと開発の対象を広げると報じている。

 一連の報道に対しAUOは4月18日、「投資家向け説明会の開催を直前に控えた時期にあるため、単一の顧客に関するコメントは差し控える」と表明。ただ経済日報によると前回の投資家向け説明会でAUOは、12年第2四半期から中小型AMOLEDの量産を始めると表明している。