「本当に日本の製造業は、これまで本当に儲かっていたのでしょうか」

 「中国で製造業の火は消えてしまうのでしょうか」

 講義の参加者から質問が相次ぐ。

 先週末、中華商業連合会という中国全土の経営者の日本訪問団に対して講義を行ったときのことである。

 講義では、聴講者から「中国のモノづくり企業全体も存続が非常に厳しくなってきた」との声が多く聞かれた。中国現地では製造業の利益率が4~5%程度しか確保できなくなっており、中国の他の産業に比べても非常に厳しいということだ。このままでは、中国からモノづくりがなくなってしまうかもしれない。そんな不安な気持ちを中国メーカーの経営者達は、私にぶつけてきたのだ。

 日本のモノづくり企業は、1990年代以降、中国を意識しながら闘ってきた。バブル経済崩壊以降、中国をはじめとするアジアの各地に日本企業は進出していった。そこで、かつて自らが技術移転を進めてきた現地企業と全面的な競争をするという、皮肉な立場に置かれることになったのである。

 ただ、日本を苦しめてきた中国のモノづくり企業も、いま曲がり角に立たされている。まず大きな問題としてあるのが労働者の賃金上昇によるコスト増。中国沿岸部での賃金上昇は、年率20%以上という。それでも雇用が確保できない。春節(中国の旧正月=毎年2月上旬)には労働者が地方都市へとUターンしてしまい沿岸都市部の工場には毎年戻ってこない。今、製造の現場は深刻な労働者不足に陥っているのだ。

 こうしたこともあり、人に頼るのではなく、機械を積極的に導入する動きが顕著になっている。そこで、かつて日本の工程現場を監督していた日本技術者が中国の現場では引っ張りだこになっている。2012年問題(団塊の世代の65歳でも大量定年退職)を抱える日本にとっては朗報といえるかもしれないが。

 雇用問題で苦しんでいるのは中国だけではない。ベトナムでも労働者確保が難しくなりつつあり、安い製品を作り続けるならインドネシアやミャンマーなどへ展開しなければならなくなっている。つまり、アジア全域でモノづくりを巡る大構造転換が起こっているのだ。

日本の100年企業に学びたい