急速な経済成長と政府による省エネルギー対策の推進を背景に、中国はいまや世界で最も潜在力に富む省エネルギー照明市場になった。さらに今後数年の間に、高度成長期に突入すると予測されている。この勢いは、グローバルな事業を展開する照明器具のリーディング企業を呼び込む原動力になっているだけでなく、中国国内の各地で照明器具メーカーを立ち上げるきっかけにもなっている。なかでも注目を集めているのがLED照明分野である。各地の自治体によるLED照明の積極的な導入と大企業からの投資により、「グループ化」と「ローカル化(現地化)」が進み、企業間・グループ間の競争は激しさを増しそうだ。

 本稿では、まず中国のLED照明市場の現状と今後について述べ、次に同市場の競争形態について分析し、最後に台湾と日本のLED照明器具メーカーの同市場への進出状況と今後の市場参入のチャンスについてまとめる。中国LED照明産業と市場拡大の未来図を描くとともに、日本と台湾の企業の皆様に参考にしていただければありがたい。

急成長を遂げる中国のLED産業

 中国では2003年から本格的にLED関連産業が立ち上がった。「国家半導体照明プロジェクト」と第11期5カ年計画の1つである「半導体照明の産業化技術開発」計画が打ち出され、産業規模の拡大と技術レベルの向上に対する支援が行われている。また、「十城万盞」(10都市に1万個の電灯設置)計画や「半導体照明基地」の開設を通して、各区域でLED照明器具の使用が始まった。国を挙げての一大プロジェクトとあって、協力メーカーによる投資活動も活発化し、中国LED照明業界における産業構造の雛形が出来上がった(図1)。

図1 中国LED産業チェーンと主要メーカー
出典:工研院IEK(2012年3月)
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 中国のLEDの産業と市場は、政府による強力な後押しを受けて急成長している。生産額全体が大幅に増加したことに加えて、川上・川下メーカーの産業チェーンへの参入も加速した。これにより、中国はLED戸外照明の主要市場となっただけでなく、LED部品(チップ)の主要生産国の1つへと躍進した。

中国LED産業の成長力には目を見張るものがある。2006~2011年の生産額の年平均成長率は30%に達した。しかも、2009年以降、急速に拡大し、2011年の生産額は1560億人民元に増大している。しかし、バランスよく発展したとは言いがたく、川下の応用分野や封止分野に集中してしまった。2011年の応用分野の生産額が1210億人民元、封止分野の生産が285億人民元だったのに対し、技術的なハードルが比較的高いエピタキシー/結晶粒分野の生産額はわずか65億人民元にとどまっている(図2)。

図2 中国LED産業の生産額と年平均成長率
出典:中国国家半導体照明工程・産業連盟、工研院IEK(2012年3月)
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