一方、太陽光発電については、フォックスコンが1000億元を投じて同業界に参入するというもの。中国系の太陽光発電業界では、「巨大な資本とエレクトロニクス産業で培ってきた技術・経験を持つ同社の参入で、大半の企業が淘汰されてしまう」として、競合は戦々恐々としているという。

 フォックスコンの太陽光発電ビジネスへの参入については当社でも2011年12月、「フォックスコン、江蘇省塩城に太陽電池工場」として報じた。同社によると投資額は3000万米ドルで、事業の運営主体として「富昱能源科技」という企業を設立している。

 台湾の経済紙『工商時報』(11年12月21日付)によると、塩城市は、多結晶シリコンなど太陽エネルギー産業川上の中国系大手、GCL-Poly(保利協鑫)社のトップで「アジアの多結晶シリコン王」の異名をとる朱共山主席の出身地。朱主席はこれに先立つ同11月末、台湾台北の圓山大飯店で開催された「2011年両岸(中台)再生可能エネルギー産業協力交流会議」に出席した際、「今後1~2年で太陽光発電市場では統合が加速する」と指摘。その上で、「強者連合が産業の厳冬期を乗り切るための上策だ」として、同社がフォックスコンとの関係を進めて行くことを示唆していた。

 中国紙『21世紀経済報道』(同11月15日付)によると、フォックスコンとGCL-Polyは、郭氏の父方の故郷である山西省で、炭坑の町として知られる大同市に300MW(メガワット)級の太陽光発電所のほか、供給チェーンの完備した太陽エネルギー企業を構築することで合意。投資額は双方合わせて900億元に上ると報じている。

 不動産開発や太陽光発電とフォックスコンが異業種に対する取り組みを強化する理由について、先の時代周刊は、EMSビジネスで得られる利益が減少の一途をたどっていることが背景にあると指摘する。Appleの要請を受けてフォックスコン生産拠点の労働環境を調査していた米公正労働協会(FLA)は3月末、フォックスコンの生産拠点で労働者の権利を侵す十数件に上る厳重な違反が見つかったと公表。これを受けAppleは3月29日、フォックスコンと、生産拠点の労働環境改善などで合意したことを明らかにした。さらにフォックスコンは、労働者の労働時間の短縮と給料の引き上げを実施すると表明している。

 同誌はこれを取り上げ、「フォックスコンがAppleの仕事をして得る利益率はわずか2%に過ぎない。郭氏がいつまでもこの情況に甘んじることはないだろう」と分析。その上で、シャープの筆頭株主になったことや不動産、太陽光発電への進出という一連の動きは、フォックスコンが単純なEMSからの脱皮を図っている証左だとした。とりわけシャープとの提携については、シャープの技術を得ることで、将来的にフォックスコン独自ブランド設立の下地を作ったとの見方を示した。

 中国政府系のシンクタンク、国務院研究発展センター産業研究センターの銭平凡主任は時代周刊に対し、「仮にフォックスコンが独自ブランドのスマートフォンとタブレットPCを出せば、中国系の多くのブランドが抜かれるのは必至だ」と話している。