シャープが3月27日に発表した、台湾Foxconn(フォックスコン=鴻海=ホンハイ)社との資本・業務提携。ここ上海をはじめとする中国や、フォックスコンの本拠地である台湾でも、発表直後からメディアによる怒濤のような報道が展開され、アナリストや専門家らが提携の背景を探る記事が新聞に、雑誌に、ネットに、テレビに溢れ返った。

 Tech-On!もフォックスコンの郭台銘董事長とのインタビューに、「必ず勝てる、共にSamsungに挑もう」という見出しをつけていたようだが、今回の提携を伝えた中国、台湾の論調で最も多かったのも、これに準ずるものだった。すなわち両社の提携が、Samsung Electronics社をはじめとする韓国勢に対抗することを目的にしたものだとするものだ。

 このほか主要な論調としては、「シャープの狙いはフォックスコンの資金と生産能力の引き受け、フォックスコンの狙いはシャープの技術」「シャープとの提携でフォックスコンは、米Apple社が2012年の投入を目指すといわれるスマートTV『iTV』の受注と生産を目指す」というものが目立った。

 郭董事長は今回、シャープの第10世代工場である堺工場の生産・販売を担当するシャープディスプレイプロダクト株のうち、シャープが保有する92.96%の半数に相当する46.48%を、660億円で個人で取得することになった。シャープによると、フォックスコンは同工場の生産能力の半数を引き受けるという。一方、台湾紙『経済日報』(3月29日付)は台湾業界筋の話として、フォックスコンが、シャープの技術である酸化物半導体(IGZO)技術を堺工場に導入し、AppleのiTV用パネル専用ラインにすると報道。部品からパネル、組立まで一貫した「ワンストップ・サービス」をアップルに提供するための体制整備を急ぐとしている。

 同筋は、「最大顧客であるアップルの求めに応じ、フォックスコンはこれまでの組立業務から、パネルを含む川上の部品への取り組みを強化している。売上総利益率の高いコア部品を取り扱うことにより、フォックスコン自身も利益の向上が見込める」と指摘。「アップルがiTVを成功させるためには、完成品で競合するサムスン以外のパネルメーカーを育成する必要がある。シャープ、フォックスコンの提携をアップルが支えていく構図がある」と分析している。

 当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)でも、「フォックスコン、アップル『iTV』専用ラインをシャープ10世代工場に」「≪シャープとフォックスコン提携 台湾の視座・6≫シャープの技術でアップルから受注増狙う」などと題して報じた。

 これらの見方についてはすでに日本でもさまざまなメディアで出尽くした感があるので、ここでこれ以上なぞることは避け、いささか毛色の違う見方を紹介することにしよう。フォックスコンが単純なEMS企業からの脱皮を図っているフシがあり、シャープとの提携もその一環だとする分析だ。