機器設計者が手元で論理を書き換えられるFPGA。開発費の高騰が止まらないASICやASSPの代替として、電子機器への搭載実績を伸ばしています。FPGAの競争力の源になっているのが、半導体製造技術の微細化です。一つの設計で生産数量を増やしやすいFPGAは、量産の立ち上げに非常に向くという理由から、最先端の製造技術をいち早く導入することができています。これにより、ASICやASSPに対する優位性が高まり、採用が後押しされるという正のスパイラルを構築しています。

 微細化の導入で先端を行くFPGAメーカーが次なる付加価値として白羽の矢を立てている技術が、Siチップを貫通するビア、いわゆるTSV(through silicon via)です。製造技術の微細化と組み合わせる、あるいは場合によっては微細化に取って代わる実現技術として開発を加速させています。

 TSVをめぐるFPGAメーカーの技術開発では、やはり大手メーカーの米Xilinx社と米Altera社が抜きん出ています。量産化で先陣を切ったのはXilinx社です。同社は、TSVを形成したSiインターポーザ上に複数のFPGAチップを並べて1パッケージ化する技術「Stacked Silicon Interconnect」に基づく最初のFPGA「Virtex-7 2000T」の出荷を開始したと2011年10月に発表しました。Virtex-7 2000Tは、28nm世代の技術で製造した4個の同じFPGAチップを並べたものです。この技術には、チップをパッケージ基板上に実装する場合に比べ、チップ間の配線を高密度にでき、配線長を短くできる利点があります。同社の狙いは、製造技術の微細化を超えるペースで、FPGAの高集積化を推進することにあります。

 FPGA業界のもう一方の雄であるAltera社も、ついに動きました。かねてTSVベースのチップ統合技術の開発に取り組んでいることは表明していましたが、2012年3月下旬に正式発表に踏み切りました。台湾TSMCと共同で、TSMCのCoWoS(Chip on Wafer on Substrate)統合プロセスを採用したヘテロジニアス3D ICのテスト用デバイスを共同開発したという内容です。Altera社の狙いは、Xilinx社とやや異なります。Xilinx社は現時点の公表レベルでは、大規模FPGAの高集積化に主眼があるのに対して、Altera社は、FPGAを含めたロジック・チップとアナログ、メモリなど、多様な要素技術を単一のデバイスに集積することを狙っています。その集積化対象には、Altera社が開発に力を入れる光通信技術なども含まれます。

 今後、FPGA業界の2強が、TSVを舞台に切磋琢磨し、同技術の発展が加速することを願っています。なお、日経エレクトロニクスでは2012年4月16日号の特集で、TSVを活用した3次元実装技術を取り上げる予定です。