避けられない競争関係

 両社が誕生した1980年代の中国は、計画経済から市場経済へ転換していた真っ只中。経済の発展に伴って中国の通信サービスは急速に拡大し、多くの通信関連企業が次々と誕生した。ファーウェイとZTEの本拠地となる経済特区である深セン市だけでも、200社以上の通信関連企業がひしめき合っていた。全国都市部をターゲットとして交換機市場にいたっては、既に外資系企業が席巻していた。発展するどころか、生存すら困難な状況であった。

 両社のトップは、技術力がなくてはほかの企業と差別化できず、将来的に生き残れないと、強い危機感を持った、そこで両社は、早い段階から研究開発に注力、電子交換機の開発に成功した。同業の国内他社に勝ち抜いたのだ。しかし、中国市場の大半は既に、欧米日の外資系通信設備メーカーに支配されていた。待っていたのは二社間の競争ではなく、歴史と技術力に勝る10社近くのグローバル企業。残酷な競争環境だったといえる。そこで、両社は、外資系企業が着手していなかった農村市場に重点を置いて、生き残る道を開いていた。

 それからの20数年は、外資系大手通信メーカーを成長目標とはしているが、実際にはお互いの存在を強く意識し、競争に勝つためにベストを尽くしていた。競争は、百利あって一害なしではないが、成長を促進できるのは間違い。強いライバルがいるこそ、常に自身を改革しなければならない。

 すぐ近くに同業他社がいるので、人材の流出が一番の問題だ。それを防止するため、両社人材育成や人材活用の仕組みに、一般の企業と比較してより一層意識して工夫している。若手、能力のある社員に十分な成長空間やチャンスを与える。貢献があればすぐ評価され、昇進や昇給がされる。ファーウェイは、20代後半で役員レベルへ昇格する例が少なくない。競争相手への人材の流出を完全に阻止できたわけではないが、一般の流動率よりはかなり低いという。もし、両社の距離が離れていたら、人材流出をそれほど意識しなくてもよかったかもしれない。

 規模の拡大に伴ない、特に海外市場を開拓する際に、社内のマネジメント体制とシステムの脆弱性が気がかりになった。グローバルに展開するためには、体系的で透明性の高い業務管理システムが必須条件となる。そこで両社は、相次いで世界トップレベルの業務管理システムを導入することを決めた。

 技術重視の両社は、ともに売り上げの10%を研究開発に毎年投入。特許の申請数は両社とも世界のトップレベルとなった。ファーウェイは早くも2008年、WIPOの国際特許出願ランキングでNo.1となった。ZTEもそれを意識して、一生懸命に追随し、ついに2011年、WIPOの国際特許出願ランキングでNo.1となった。現在、LTEエリアにおいては、二社が保有している特許は、合わせて15%以上を占めているという。両社は、イノベーションの力が強くなり、数多くの世界初を生み出した。例えば、

ZTE

  • スウェーデンの通信キャリアへ世界初のLTE FDD/TD-LTEデュアルモード商用ネットワークを提供
  • 世界初の対称型10G EPONを開発
  • 世界初のTD-LTEの基地局を開発

ファーウェイ

  • 世界初のルーター用200G高速ラインカードを開発、
  • 世界初の商用LTEネットワークのサプライヤーに選定
  • 世界初のNFC対応スマートフォン開発

 あらゆる領域において、影のように存在する競争相手がいるので、常にベストを尽くしているうちに、自身の実力がますます強くなっているというわけだ。