今年1月にラスベガスで開催された民生機器関連で米国最大の展示会「International CES」に関する様々な報道を見た方は、もっとも注目されていたのは次の二つのことだと感じたかもしれない。一つは、SamsungとLGが、2012年内に55型の有機ELテレビを発売するということ(Tech-On!関連記事)。そしてもう一つは、スマホ分野においてファーウェイ・テクノロジーズ(Huawei Technologies、以下ファーウェイ)と中興通迅(以下、ZTE)が大躍進しているということだ。ファーウェイとZTEはいち早くLTE対応のスマホを発表。特にファーウェイは世界で一番薄いスマホを展示した。「最新技術で日本勢を追撃、スマホで中国メーカーが見せた存在感」といった見出しで両社を紹介した記事もあった。

 私の興味を引いたのは、最新型のスマホや有機ELといったことではない。ファーウェイとZTE、そしてSamsungとLG、この二組が近年、いつもペアのように展示会や記事に登場しているというその存在感だ。

 SamsungとLGは言うまでもない同じく韓国の会社だが、テレビや白物家電など多くの市場において、長年のライバル会社だ。それと似ているように、中国のファーウェイとZTEは、通信設備市場や携帯端末市場における長年の競争相手である。この二組は、中国や韓国の国内だけではなく、グローバルでも激しい競争を繰り広げている。

 SamsungとLGは狭い韓国において、互いに隣に住んでいるかのような存在である。一方、中国は広大な土地があるにも関わらず、ファーウェイとZTEの本拠地は、偶然にも同じ深セン市にある。SamsungとLGの関係と同じように、二社はどちらも負けることができなく、そしてともに大きく成長した。

 イノベーションは企業間の競争とも大きく関係していると言われる。陸上の試合と似ており、強い競争相手がいない場合は、優勝しやすいけれどもよい成績が得られない。さらなる成長もならない。強い相手がいることによる企業間の競争は、間違いなくイノベーションの原動力の一つである。

 ファーウェイとZTEの誕生から現在までの歩みを踏まえて、二社が急成長した歴史を紹介する。

両社の概要

 まず、両社の概要を以下にまとめてみた。

社名
中国語:華為技術中国語:中興通迅
英語:Huawei Technologies
日本語:ファーウェイ
英語:ZTE
日本語:ZTE
社名の由来
中華の為中華の振興
創立
1987年
交換機販売代理から起業
1985年
前身は国営通信研究所
所有者
100%民営国有+民有
上場
未上場上場(香港と深せん)
分野
通信設備、通信端末通信設備、通信端末
従業員(2011年)
11万8万
経営戦略
企業文化
より攻めの経営
「狼」と喩えられる
より穏健の経営
「牛」と喩えられることがある
R&D
多数の海外大規模R&D拠点多数の海外大規模R&D拠点
特許
WIPOの2008年国際特許出願ランキングNo.1WIPOの2011年国際特許出願ランキングNo.1
売り上げ
2.3兆円(2010年) 0.88兆円(2010年)
売り上げの海外割合
2/3以上2/3
シェア
通信設備No.2 (2010年) 携帯端末5位 (2011年)
両社とも、通信インフラ、IPネットワーク、携帯端末、ソリューション等の事業分野ではトップグループに位置づけ
(両社のホームページ、関連の報道資料より整理)

 製品分野や事業範囲が2社ともかなり似ているので、誕生してから間もなく熾烈な競争を強いられてきた。通信業界の「深せんダービー」もしくは「中国ダービー」とも言われている。