製品第1号は、都道府県の地方の公的研究機関などが導入

 1993年に味認識装置の第1号「SA401」を発売し、事業として成立するかどうかを世に問う段階に入った。味覚センサーの原理は、味覚の基となるうまみなどの成分と選択的に反応(静電相互作用や疎水性相互作用などで)する脂質膜が、反応することによって電位が変化することをセンサーとして利用している。このため、計測用電極に加えて、測定時の原点を決める参照電極も備えている。

  第1号「SA401」は味覚センサーを被測定物に浸し反応させ、引き上げる作業などをこなすロボットアームを備えている。このロボットアームを動かす制御ソフトウエアのOS(基本ソフト)にはMS-DOSを用いた。米国マイクロソフト社がOSの「Windows95」を販売する以前だっただけに、当時としては妥当なOSを採用したといえる。

 味認識装置の第1号の販売は、味覚センサーの測定結果が何に役立つかを伝えることから始まった。第1号は都道府県の公的研究機関などに購入してもらうことができた。例えば、「長野県工業技術総合センターや岩手県工業技術センターが導入し、地元の清酒メーカーの清酒の味の評価などに用いられた」という。この第1号は、約4年間で約10台を販売した。

 第2号「SA402」を1996年に発売した。ロボットアームを動かす制御ソフトウエアのOSに「Windows95」を採用し、味認識装置の操作の制御や解析の使いやすさを大幅に改良した。この機種から、現在の測定法である、膜電位の差を測る「CAP測定法」を採用した。

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図1 味認識装置の第4号機「TS-5000Z」 

 味認識装置の第3号「SA402B」は2000年に発売した。第2号「SA402」では操作・制御用のパソコンに当時の国内でのベストセラー機だったNECのパソコン「PC-98」を用いていた。これに対して、米国IBM社が規格を決めたPC/AT互換機がパソコンの主流になり始めたため、これに対応する改良を施した。この当時は、マイクロソフト社のOSも次々と更新され、「その都度、マイナーチャンジを小まめに施した」という。

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図2 味認識装置のロボットアームに装備された味覚センサー。味覚センサーは被測定物の液につけられ、計測した後に、引き上げられて洗浄されるという一連の測定サイクルが繰り返される

 この第3号を販売している途中の2002年に、アンリツからスピンアウトし、インテリジェントセンサーテクノロジーを創業した。このため、味覚センサーの改良もベンチャー企業の成長策として積極的に進められた。

 第4号機となる「TS-5000Z」は2007年に発売した(図1、図2)。同機はネットワーク対応に対応させたもので、管理用サーバー(OSはLinux)による食品生産の品質管理などを可能にしたものだ。味覚センサーの改良に加えて、操作・制御用パソコンの進化に対応することが味認識装置の事業化を進める際のポイントになった。