アンリツの事業戦略見直しの決定を受け、スピンアウトし独立

 平成14年(2002年)早々に、アンリツは通信ネットワーク機器への本業回帰への事業戦略を取り、事業の選択と集中を実施した結果、新規事業だった味認識装置事業は他社に売却される可能性が高まった。この時に、当時アンリツの社員だった池崎社長は大決断を下した。

 2002年1月にアンリツを退社し、1月30日にインテリジェントセンサーテクノロジーを設立し、受け皿とした。当初は資本金1000万円で創業した。短期間で「資本金は3000万円に増資した」という。創業時はアンリツで上司だった谷口晃主席研究員が代表取締役社長に、池崎さんは代表取締役専務に就任した。谷口さんは創業時から3年後に池崎さんに代表取締役社長を譲った。

 同年4月に、アンリツから味認識装置事業の移管を受け、インテリジェントセンサーテクノロジーは無事に船出した。同社は、現在も神奈川県厚木市のアンリツの本社・工場内の建屋に入居している(オフィス・研究開発スペースを借りている)。このため、インテリジェントセンサーテクノロジーを訪問するには、アンリツの受け付けで手続きをして入構する。ただし、「アンリツからの資本金の投資は受け入ていない」という。

 アンリツから独立し、味認識装置事業を展開し始めたため、創業当初は行政からのさまざまな支援を受けた。この点は当時、創業が相次いだ“大学発ベンチャー企業”と同じような道を歩んだ。九州大の研究成果である味覚センサーの技術移転を受け、味認識装置を製品化したという点では、広義の大学発ベンチャー企業といえる。

 2004年4月に神奈川県の創造的中小企業振興事業補助金の交付対象企業に認定されたり、文部科学省系の科学技術振興機構(JST)の委託開発事業である独創的シーズ展開事業の開発課題「人工脂質膜を用いた品質管理用高耐久性高速味覚センサ」に選ばれ、2007年4月に科学技術振興機構が「開発に成功」と認定したりするなどの支援を受けた。この当時は、行政機関などから味覚センサーを用いる味認識装置事業の新規事業としての可能性を高く評価されていた。資本金も途中でベンチャーキャピタル(VC)からの投資を受け、2006年には9500万円まで増資し、順調に成長し始めた。現在は、資本金は1億2500万円に達している。