日本における“もの・ことづくり”を可能にする構造とは

 日本の成長戦略であるグリーン・イノベーション、ライフ・イノベーションを想定しながら、“国を挙げてのもの・ことづくり”の構造とはどんな形態かをイメージしてみた。

 “こと”のプラットフォームはICTであることに間違いなく、どの国・企業にとっても強化領域である。一方、“もの”についてはミクロなものから巨大なものまで千差万別あり、国・地域による得意・不得意もある。“もの・ことづくり”の国になるには、それらの組み合わせが自由自在に可能な産学官の構造形成ができればよいのだが、全てを万能に日本でやることはできない。では、日本にとって優位な組み合わせとは何か。その例として挙げられるのが、ICTと小型化・精密化技術ではないかと思っている。

 日本の自動車産業にしても家電産業にしても、“ものづくり”という商品化技術を中心に、実に質の高い、分厚い裾野を産業界に形成してきた。その基盤は小型化技術とICTの組み合わせだったと思っている。例えば、次々に高い環境規制を乗り切ってきたのも、ICTと精密技術の組み合わせである電子部品(センサなど)や、精密な加工技術、精緻な制御技術、コンパクトな生産ラインなどがベースになってきたのではないだろうか。

 これからも、ICTはビジネスを大きく変えていく。ほとんどの“もの”はネットワークに接続されるようになり、サービスもその上で提供されていくものが増えていくからだ。例えば、自動車産業にしても「エネルギとICTをプラットフォームとするモビリティ産業」といった形態に移行していく。乗るためにエネルギを消費する“もの”でなく、家庭や社会へのエネルギ供給源の1つとなって、スマートエネルギ、スマート社会の一角をなしていくべきと思う。

 同じモビリティの分野で、日本が誇る社会システムの一つ、新幹線をはじめとする鉄道システムもまたICT+小型化技術+精緻な制御技術をもって、まねのしにくいスマート・モビリティとして世界に積極的に展開できる“もの・こと”モデルである。その産業構造は素材・機械加工・産業用電子部品・センサ技術・制御装置から運用のためのシステム制御、社内のデジタルサイネージに至るまで厚く形成でき、世界のスマート社会にも貢献できる。


医療分野における日本の可能性