本連載ではこれまで、日本が目指すべき“国を挙げてのもの・ことづくり”の方向性と、その一環となる国際標準化・規格化への国全体(産学官)の協調的な取り組みの必要性について述べた。国を挙げて取り組むべき事としてもう一つ挙げられるのが、構造的な改革の必要性である。


“国を挙げてのもの・ことづくり”には構造的な改革が必要

 前回も述べたが、戦後の日本は繊維、鉄鋼、造船、自動車、家電、電子、デジタル家電などと機軸産業を発展・進化・推移させてきた。しかし、最近の家電メーカーの経営不振のニュースや日の丸半導体(DRAM)会社の会社更生法適用申請のニュースにも見られるとおり、従来の延長線ではグローバル競争を勝ち抜きにくい状況となっている。今まさに、産業構造面での見直しが求められていると思う。

 筆者が考える見直しの方向性は、過去に日本が実施してきた業界縦割りの色彩の濃い強化策ではない。国として目指す価値提供・目的(“こと”)の領域を複数明確に示した上で、それらにマッチする“ことづくり”や“ものづくり”、あるいは“もの・ことづくり”のできる産業群を幅広く、かつ厚い層として形成していく構造変革である。これを、国全体(産学官)が相互に共鳴し合うことによって(ただしあまり強固でない結び付きで構わないと思うが)、実現していくことである。


各国の最近の“国づくり戦略”


 この観点で、各国の最近の動きをまとめておきたい。

◇米国:「サービス・サイエンス」に基づく戦略
 21世紀に入ってからの政策には、「米国の競争優位はイノベーション以外からは得られない」という考えが基本にある。その政策の中で強い印象を受けるのが『サービス・サイエンス』である。その定義は、「コンピュータ科学、事業研究、産業工学、ビジネス戦略、経営科学、法学等を統合した新興学問分野」となっており、振興策の記述には「イノベーションの新たなあり方や、GDPや雇用の多くを占めているサービス産業に対する研究開発が不十分との認識から『サービス・サイエンス』の振興を提案する」とある。まさに”国を挙げてのことづくり”の戦略ではないだろうか。
 そして、本連載の第3回目で触れたが、最近の米国はオバマ大統領の一般教書にあるとおり『米国の製造業復権、製造業の国内回帰』に動いている。日本経済新聞2012年3月4日付け朝刊「蘇るメードインUSA」には、政府と産業界の連携強化を示唆する「外交を経済利益の拡大に活用する」とのクリントン国務長官の表明や、人材育成に企業とコミュニティーカレッジが連携することなどが報じられている。

◇中国:サービス業の成長へ向け構造転換