前回のこのコラムでドイツVolkswagen社の新モジュール戦略「MQB」を取り上げた直後に、日産自動車もCMF(Common Module Family)と呼ぶ新しいモジュール戦略を発表しました(関連記事)。

 日産のCMFは、車両全体をエンジンコンパートメント、コックピット、フロント・アンダーボディ、リア・アンダーボディ、という四つのモジュールに分割した上で、それぞれのモジュールに適切なバリエーションを用意し、これらのモジュールを組み合わせることで、小型車から大型車、SUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)までさまざまな車種を開発するというものです。

 前回の記事の繰り返しになりますが、Volksgwagen社のMQBにしても、日産のCMFにしても、目指しているのは、多様な車種を、いかに少ない部品種類で実現するかということです。これまでのプラットフォーム共通化では、例えばハッチバック車をベースにSUVを開発するような場合、タイヤを大きくするためにサスペンション部品を変えたり、車両の質量が増えるためにフロアの強化が必要になったりといった具合に、部品の変更を余儀なくされ、同じプラットフォームといっても、結果としてでき上がったものは、ベース車とかなり異なる、ということが往々にしてありました。

 これまでのプラットフォーム戦略では、Bプラットフォーム、Cプラットフォームといった具合に、セグメント別にプラットフォームを開発し、同じセグメントの中で共通化するというのが常套手段でしたが、MQBとCMFはどちらもこの考え方をやめ、セグメントを越えて部品を共通化しようとしている点がこれまでのプラットフォーム戦略と大きく異なります。確かに、Bセグメント車でも、派生車種の質量が増えたために、Cセグメント並みに立派なサブフレームが付いている車種もありましたから、セグメントでプラットフォームを分けるというのは、あまり意味がなくなってきたのかもしれません。

 ただ、ここで気になるのは、全面改良がどうなるかということです。MQBではガソリン、ディーゼルともエンジンの搭載方法を共通にしています。こうしたMQBの設計上のルールが、次にエンジンを刷新するときには、「制約」になってしまう可能性がないとはいえません。Volkswagen社にしても日産にしても、次のモジュール刷新のときに、今回のMQBやCMFのルールに従って設計するのか、それともまた全面的に刷新するのか、この新たな試みの先行きに注目したいと思います。