こうした中、EMS/ODM業界では既に、新iPadのことよりもむしろ、その先のことに関心が集まっている。9.7インチのディスプレイサイズを一回り小さくした小型iPadを、Appleがいつ投入するのか、というのがそれ。先のiPhone 5ではないが、11年12月から今年1月にかけての時期に、既に基本形となるサンプルを完成させたというのだ。

 当社のウェブサイト閲覧には会員登録が必要2週間無料で読める試用会員も用意)でも、新iPad発表直前の3月5日、「7.85型iPad mini、12年Q3発売で東芝と台湾系サプライヤーが大口受注」として報じたが、台湾の市場や業界で3月初旬、東芝のNAND型フラッシュメモリと、台湾AU Optronics(AUO)社のパネルを搭載した7.85インチの小型モデル「iPad mini」を、Appleが12年第3四半期に発売するという観測が流れた。

撮ったばかりのスチール写真をiPad 2を使って確認する中国の地方劇団員ら(浙江省寧海の小百合越劇団で)

 台湾紙『経済日報』(3月5日付)によると、AUOはこれまで、Appleの超薄型軽量ノートPC「MacBook Air」にパネルを供給していたが、iPadシリーズではminiで初めてサプライチェーン入りを果たした。一方、NAND型フラッシュメモリについては、Appleは初代iPadにおいて韓国Samsung Electronics社と独占契約を結んでいたが、2011年に発売したiPad 2で東芝を第2サプライヤーに加え、今回発表した新iPadで、東芝とSamsungの立場を逆転させたと指摘。さらにiPad miniについては、東芝がNAND型フラッシュメモリを独占供給するとしている。

 このほか台湾のネットメディア『cnYES』(3月6日付)は、台湾系サプライヤーの話として、Appleが11年末から12年1月にかけて、7.85インチiPad miniの基本となるサンプルを概ね確定したと指摘。iPad miniの競合となる第2世代「Kindle Fire」をネット通販大手、米Amazon社が市場に投入するタイミングを見極めようとしているだけで、miniを発売すること自体は決まっているのだという。

 先に紹介した経済日報は、iPad miniのパネルについてはAUOのほか、韓国LG Display(LGD)社もAppleにサンプルを提出したが、Samsungは排除されたと指摘。世界中で展開している訴訟合戦を受け、Appleが今後、Samsung離れを加速するとの見方を示している。

 これに対してcnYESの伝えた台湾系サプライチェーンは、新iPadのパネルサプライヤーをSamsung、LGD、シャープの3社だとした上で、「シャープとLGDは歩留まりの悪さに苦戦している」とコメント。結果、12年1~2月出荷分のうち8割をSamsungが占めたとし、iPad供給でSamsungが依然、Appleにとって大きな存在だとの認識を示している。

 AppleとSamsungとの関係はさておき、上海のあるEMS業界筋によると、「市場に投入できるレベルまで製品を作り込んでも、市況などの状況で最終的に発売を断念するというケースはいくらでもある」とのこと。その伝で行くと、iPad miniの試作品が存在していてもおかしくないし、結果的に発売に至らないということだってあるのだろう。今回の新モデルの名前を巡って「iPad 3だ」「いや、iPad HDだ」と情報合戦が加熱した末、両方とも全くの大ハズレだったことからみても、miniが発売されるかどうか、当たり前ではあるが、出てみるまでは分からないという部分がある。

 ただ、名前だけは当たっているような気がする。なぜって、サイズの小さいiPadだから「iPad mini」。見事に「新しいiPad」とネーミングの路線が同じではないか。