2012年2月の大型液晶パネルの用途別価格変動幅は、引き続きノート・パソコン用、モニタ用パネルが前月比ステイ(図1、一部の付加価値パネルは小幅下落)で決着した。テレビ用については、CCFLバックライト搭載パネルは同ステイ、LEDバックライト搭載品などの付加価値パネルは1%以下(1~2米ドル)と小幅の下落で決着している(図2)(大型液晶パネル価格の詳細レポートはこちら)。

 2011年秋以降、月次の価格変動幅が縮小しており、既に半年以上5%以下で推移していることになる。パネル・メーカー、セット・メーカーとも、需要が盛り上がるトリガを模索している状況が続いている。

図1 IT用液晶パネル価格推移(3月以降は予測)
出典: ディスプレイサーチ,「月刊 大型LCD&PDP価格調査レポート」
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図2 32型テレビ用液晶パネル価格推移(3月以降は予測)
出典: ディスプレイサーチ,「月刊 大型LCD&PDP価格調査レポート」
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 既報の通り、中国の旧正月商戦のセット販売結果は芳しくなかった。中国政府による家電の購入促進施策が2011年12月で一部終了したため、2010年から2011年にかけて駆け込みの需要があったことを考慮すると、需要の盛り上がりが前倒しになったとも見ることができる。この推移を見ると、次の労働節期間の出荷も、あまり期待できなさそうだ。また、北米における「スーパーボール」開催の週は、短期間のテレビ・セット販売台数の盛り上がりが期待されたが、実際は昨年末の商戦期の段階で既に需要が満たされていたため、売り上げは芳しくなかった。ただし、在庫はやや増加したものの問題になる水準ではない。

 今後のイベントとしては、IT系では米Intel社の新CPUと米Microsoft社の「Windows 8」の出荷開始だろう。ただ、セットの生産計画を見る限りは、特段の需要の増加は認められず、パネルの需要も通常通りの季節変動にとどまりそうだ。一方、その新CPUの出荷が数週間程度遅れると報じられていることや、次世代Windowsと現行パソコン・セットとの互換性を保証する「Windows Capable」のキャンペーン開始が第2四半期後半頃に計画されていることもあり、セット・メーカーは必要最低限のパネルを調達していくことになるだろう。

 テレビ関連のイベントは、今年はオリンピックが開催され、テレビ・セット出荷増のトリガとしたいところである。しかし、欧州景気の悪化、他の地域との時差などが障害となり、大きな盛り上がりは期待しにくい。

 世界的な経済指標の悪化を目の当たりにして、需要の低迷が当分続きそうなことから、セット・メーカーにおける最新の2012年の出荷計画は総じて弱気に転じている。われわれの各セット市場規模推移予測も、年間成長率ではタブレット端末などを除き、前期予測よりも減少する見込みだ。これに伴って、パネルの需要も減少するため、価格反転上昇の条件である需要増加のタイミングが遅れる可能性が高まった。

 その一方で、パネル供給側の製造ライン稼働率は上昇傾向にあり、一部のラインでは製造能力いっぱいに稼働させているとの話もある。しかし実態は、新技術を導入したパネルの量産が開始されたこと、29/39/50型などの新サイズや低価格の直下型LEDパネルの立ち上げ時期で歩留まりが安定しないこと、タブレット端末向けパネルの製造にラインを振り向けていることなどが背景にあるフル稼働であり、パネル需要の増加によるものではないところに注意したい。

 パネル・メーカー側がいくら値上げを要求しても、セット・メーカーからの需要が盛り上がらないうちは、価格の維持が精一杯というところだろう。

 これら足元の状況を踏まえ、われわれはパネル価格の予測を横ばいの継続する時期を6月頃まで延伸することとした(付加価値型パネルは小幅で価格下落が続く)。この期間、可能性はごくわずかながら、韓国Samsung Display社の分社化や中国パネル・メーカーの生産拡大の影響で、パネルの売り込み攻勢が強まり、パネル価格が下がる可能性があることに留意しておきたい。