この日曜日から眼が痛い。多量の涙が眼尻からこぼれる。北京の砂埃にやられたのか?鏡をのぞいてみると右目の奥が白く腫れている。明らかに「物もらい」だ。午後からは痛みがひどくなったので、近くの大学病院に行くことにした。そこは、眼科の北京最大の病院で大学に併設する病院だ。

 病院に着くなり、入口で異様な光景に出くわした。なんと寝袋やテントを立てて病院の前で立てこもっている一群がいるのだ。何のデモかと聞いてみると、診察の順番を待っている人の列なのだという。

 「目が痛いのですが、どちらに行けばいいですか」とごったがえす受付で聞くと、「紹介状はあるのか、どの先生からの紹介か」と聞かれる。実は初診なのだと告げると、看護師は「この列に並びなさい」と、先ほど見た診察を待つ列の最後尾を指さすのだった。月曜日の診察を受けるために地方からもやって来た人もいるらしい。驚くことに皆、土曜日から並んでいるのだという。

 北京や上海の大学病院では、こういった光景が至る所で見られるようだ。地方には、あまり権威のある病院がないという理由もあり、特に北京や上海の大学付属病院に患者が集中する。

 知り合いの医師に電話をして何とか早めに診察をしてもらうことになった。診察室に入るとまず、服を脱げというので、服を脱いで腹を見せた。聴診器で腹の具合を探っている。「あの眼が痛くて病院に来たのですが」というとその医師は、うるさいなという顔をしながら眼を診察し始める。そして、ケツを出してと言われ、尻に一発注射。中国では、注射は腕ではなく尻に打つ。別の医師に聞いたのだが、この方が、血管等を外さず注射が簡単なのだそうだ。

 そして、中国名物の点滴だ。とにかく中国の病院は点滴を打つのが好きだ。一人当たり年間平均で約4本の点滴を打つという統計もある。必ずと言っていいほど、中国の病院では点滴を打つ。そして、3時間400元なり。

 点滴を打っていると、脇から薬の処方が行われる。何の薬が処方されているのか分からないが、この薬は400元だ、500元だと、診察をしながら薬を売り込まれる。日本では、薬の処方と医師の診断や治療は分かれているが、中国では病院が積極的に薬を処方する。いや、処方するというより、診断中に売り込まれるといったありさまだ。