図1●成田空港第2ターミナルのキットカット売り場(その1)。あの「うなぎパイ」(写真中央右)の数倍の売り場面積を占める。主力は「宇治抹茶」。
図1●成田空港第2ターミナルのキットカット売り場(その1)。あの「うなぎパイ」(写真中央右)の数倍の売り場面積を占める。主力は「宇治抹茶」。
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図2●成田空港第2ターミナルのキットカット売り場(その2)。オレンジ色の細長いキットカット(右上)は「スカイツリー」パッケージ。オレンジ味である理由は「復活総選挙で1位」になったこと。
図2●成田空港第2ターミナルのキットカット売り場(その2)。オレンジ色の細長いキットカット(右上)は「スカイツリー」パッケージ。オレンジ味である理由は「復活総選挙で1位」になったこと。
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図3●米カリフォルニア州サンディエゴ市街で見た「おもしろけしごむ」。店の一角を占めていた。価格は1パッケージ7ドル強。Gaslamp Quarterにある玩具店兼子ども用品店「Kidz Garage」で。
図3●米カリフォルニア州サンディエゴ市街で見た「おもしろけしごむ」。店の一角を占めていた。価格は1パッケージ7ドル強。Gaslamp Quarterにある玩具店兼子ども用品店「Kidz Garage」で。
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 キットカット〔ネスレ日本(本社神戸市)〕の日本におけるラインナップの異常性については、ご存じの方も多いと思います。諸外国ではせいぜい10種類程度のフレーバーしかないところが、日本国内では200種類に近い(もしかしたら200種類を超える)発売実績があるとみられます。以前、全部数えてみようとして、100をかなり超えたところであきらめたことがあります

 いちご、オレンジ、メロンなどのフルーツ系、チーズケーキやキャラメル、ティラミス、杏仁豆腐といったデザート系、コーヒーやロイヤルミルクティー、緑茶などのドリンク系といった感じに分類できるでしょうか。ことに、日本にしかないと思われるのがわさび、唐辛子、ゆず胡椒などのスパイス系。家人はゆず胡椒をいたく気に入っておりました。日本各地にはご当地もの(2012年3月現在、19フレーバー)があり、出張時などに駅の売店でよく目にします。

 日本独自のフレーバーの大バリエーション展開は、もともとは国内市場対策だったのでは、と想像しております。10年ほど前からでしょうか、ポテトチップスなども期間限定で多種多様なフレーバーのものが発売されるようになった時期があり、キットカットもそのころから急にフレーバーが増えたようです。私は「これは海外からの旅行者にとっては非常に面白く見えるのでは」と思っておりました。ブランドは国際的に確立していますから、旅行者にとっての認知度は高いはず。近寄ってよく見ると、何やら母国では見かけないフレーバー。私なら、すぐにお土産に買い込むと思いますけどね。

 それで、国内の国際空港にはキットカット売り場ができているはず、と以前から思っていたのですが、2010年に海外出張に出た時は「田丸屋わさび」(静岡・関東限定)の試食コーナーしか見ませんでした。2011年は海外に出る機会がありませんでしたが、先月(2012年2月)に成田空港第2ターミナルを通った際には、見事にキットカットコーナーがありました。しかも2カ所も。いずれも主役だったのは「宇治抹茶」「桜抹茶」「和苺」「田丸屋わさび」といった日本風のものでした(図1、2)。

 実は私、最近キットカットに対するウォッチが手薄になっており、「榮太樓黒みつ」(東京限定)の存在を知りませんでした。そこで、この売り場で購入したのですが、外国人の先客がいて少し待たされました。つまり、それなりに売れているようで、うれしい限りです。なにしろ出発ロビーなので、買うと海外出張の間ずっと持ち運ばなければなりません。ですから、帰国時に税関を通ったあと、怪しいおじさんと思われるのを承知で出発ロビーにUターンするわけですが、それだけの甲斐があったというものです。

 少し真面目にいうと、このようなフレーバー展開は、海外でも同じようにやろうと思えば簡単にできるはずです。でも、やる気にならないのでしょう。おそらくプレーンなキットカットの売れ方に比べれば、特殊フレーバーは多品種少量生産以外の何物でもないに違いありません。チョコレートにゆず胡椒を混ぜるとか、バカバカしくてやれないのかもしれません。でも、海外でなかなかやらない以上、日本にしかない製品であるわけで、まさにそこのところに価値があると、私は思います。

 もう一つのお土産は、米カリフォルニア州サンディエゴ市街にあるおもちゃ屋さん兼子ども用品店で見かけた「おもしろけしごむ」〔イワコー(本社埼玉県八潮市)、図3〕。文房具のミニチュアや、飲料や袋菓子、カップめんなどの商品、餃子や焼売などの中華料理、フライドポテトやサンドイッチなどの軽食といったアイテムのミニチュアです。ラーメンやパッケージにわざわざ目立つように「日本製です」と、日本語で書いてあります。7個で1パックになっていて、値段は7ドル強でした。

 このおもしろけしごむ、実は国土交通省の訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)の2008年「魅力ある日本のおみやげコンテスト」のクールジャパン部門で金賞を受賞したものです。日本では、3個入りのものが100円ショップにありますから、サンディエゴでは実に2.4倍の高値です(7個入りパックの国内価格は350円のようですが)。でも、そこそこ売れているのでしょう。実は、この売り場に貼ってあったポスターは動物(パンダなど)の消しゴムのものでしたが、売り切れてしまっているようでした。

 イワコーさんのことはテレビで見ただけですけれども、社長が「うちには真似できない技術は何もない」とおっしゃっていながら、表情は自信ありげでした。非常に多くの色をそろえて微妙な色を表現し、形のよさと併せて見る人を納得させます。中国製の“偽物”もあるのですが、発色も形も不自然で、違いは明らかに分かります。ほんの少しの色の違いを表現するためにわざわざ別の色素を用意するなんて、多品種少量生産以外の何物でもないし、たかが消しゴムにそこまでするなんてバカバカしいのでしょう。

 というか、少しバカバカしいくらいのところがポイントのような気がします。

* キットカット公式Webサイトの「パッケージ・ミュージアム」には約150種類の掲載があって、フレーバーが同じでパッケージが異なるものを整理すると100種類を下回りますが、掲載されていないものがかなりの数あるはずです。

■変更履歴
掲載当初「田丸屋わさび」の名称を間違えておりました。お詫びして訂正します。現在は修正済みです。