アンダーフィルについては、これからパッケージング材料の開発を進めていく上で、ハロゲンフリー、優れた熱伝導率、耐熱性、銅配線製造工程/Low-kや銅線と互換性のある材料の開発が中心となる。さらに、例えば (1)ガラス転移点温度(Tg)の高さ、(2)係数(modulus)の低下レベルなどアンダーフィルの様々なパラメータの分析を行いつつ、顧客から提示される様々な要求に応じる形でバランスを取っていかなければならない。アンダーフィルは、フリップチップの製造工程においてチップと基板の隙間に成形材料を注入するというもので、その製造技術に対する要求は厳しい。その上、顧客からの認証取得や硬化パラメータ調整も必要であり、早いうちから顧客と時間をかけてカスタム化に関する協力を取り付けておくことも重要だ。

 このように、これら重要部品・材料分野でも日台協力を促進するきっかけが必要であり、「市場に近い」というメリットこそ、日本の産業バリューチェーンを台湾に移転するための最大の誘因になる。とりわけ、今後ますます半導体製造技術が微細化していく中で、銅配線工程におけるCMPスラリー市場の需要が逼迫することが予想されている。BT基板やアンダーフィルについても、台湾の半導体業界がハイエンドCPU・基板の開発に注力する中で、新たな需要が掘り起こされ、日台が協力に着手する契機が生まれるだろう。

2. 台湾の「産業集積」が、日本からのバリューチェーン移動を呼び込む絶好条件に

 競争力のある産業クラスタ(competitive industrial cluster)では、産業を興し、川上分野から川下分野まで一貫した生産体系を作り上げることで、地域経済を活性化させ、その地域に強い競争力を付けさせ、ひいては地域における産業クラスタの形成・発展・グレードアップを図ることが可能である。これこそが地域の競争力を高めるための重要な要素だ。台湾の産業クラスタが強力な「魅力」を有するわけがここには隠されている。

 台湾は半導体産業や太陽電池産業において、川上・川中・川下のサプライチェーンの垂直分業、相互支援、産業クラスタの各面で優位性を持つ。それだけでなく、世界市場をもリードする地位にあり、いまや世界の半導体の設計・製造・マーケットの重要拠点となっている。台湾の産業クラスタは、充実した半導体関連研究スタッフと幅広いエコシステムを備えていることから、多国籍企業からの投資を相次いで引き出している(図2)。

 このほか、CMPスラリーでは、桃園・中レキ(レキ=土へんに歴)・竹南といった地域で、既に太陽電池用ウエハーの産業クラスタが形成され、川上分野から川下分野まで一貫した作業ができる産業バリューチェーンも構築されている。CMPスラリーの川下の半導体メーカーと太陽電池用ウエハーメーカーの間では、既にオペレーション・レバレッジの高い相互関係が築かれている。つまり、例えば日本のCMPスラリーメーカーが台湾に投資し、台湾の太陽電池用ウエハーメーカーの力を利用する(CMPスラリーを購入してもらう)ことで、自社のCMPスラリー事業の収益率を高められる(図3)。外資系企業が台湾でCMPスラリー事業に投資するときの常套手段が「他力本願」戦略である。既に出来上がっている太陽エネルギー用ウエハーのバリューチェーンを利用し、CMPスラリーのバリューチェーン移動を加速させている。

図2 台湾半導体の産業クラスタとCMPスラリー産業発展の構図
工研院IEKのデータ(2012年2月)
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図3
図3 高いオペレーション・レバレッジを備える台湾の半導体・太陽光エネルギー産業
工研院IEKのデータ(2012年2月)