「どこかいい企業を知りませんか?」――。

 次世代電力網「スマートグリッド」の話が日本でも少しずつ盛り上がり始めた3年ほど前、ある企業の方から電力制御装置を得意とするメーカーがないかとの相談を受けました。聞けば、家庭用太陽光発電や蓄電池といった、100~400V程度の機器間で電力を双方向にやり取りするための適当な装置が見受けられないとのことでした。

 家電メーカーは家庭用太陽光発電向けにパワー・コンディショナは発売しているものの双方向ではなく、重電メーカーも産業用の変換装置はあるものの家庭用に適したものがありませんでした。当時は「これから開発するメーカーが現れればいいなあ」という程度の考えでしたが、東日本大震災後の電力不足を受け、「至急取り組むべき課題」との認識に変わりました。

 というのも、実はこの分野の技術者が足りていないと感じるからです。太陽電池や蓄電池用のLiイオン2次電池に関しては、精通した技術者が家電メーカーにたくさんいますが、電力を交流と直流に自在に変換し、機器間で電力を融通するための制御が分かる技術者は少ないのではないでしょうか。

 震災後、太陽光発電と蓄電池を組み合わせ、家庭内のエネルギーを高効率に管理するシステム(HEMS)に注目が集まっています。ですが、現実ではまだ限定的な機能しかなく、家庭内のエネルギーの見える化と節電アドバイスが基本です。家庭内の機器の電力を制御し、系統電力の使用量を一律で制限したりすることはできません。太陽光発電システムで発電した電力は基本的に売電し、蓄電システムは余剰電力がある夜間に充電して、昼間のピーク電力時に利用するのが主な機能です。

 今後、電気自動車(EV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)と住宅を連携させる「V2H」や、住宅と住宅を連携させる「H2H」を実現するには、複数のエネルギー変換ユニットを連携させながら安定性と信頼性が高い自律的なシステムを構築する必要があります。そのためには、電力制御が分かる技術者がさまざまな機器メーカーをはじめ、住宅メーカーや建設会社にもたくさん必要になるはずです。

 ここからは宣伝になりますが、こうした電力制御のシステムを理解し、設計するのは非常に難しいものです。日経エレクトロニクスでは、こうした自律的な電力の制御システムをモデルベース開発の手法を活用して大きな成果を出している福岡スマートハウスコンソーシアムや横浜スマートコミュニティの事例について、NEアカデミー「モデルベースによるエネルギー・システムの開発―スマートハウス、スマートコミュニティの実現に向けて―」を2012年3月15日に開催します。エネルギー制御機器やエネルギー・システムの開発に取り組んでいる、あるいは今後取り組もうとしている方々でご興味のある方はぜひご参加ください。