秋田市の人口に占める高齢者(65歳以上)の比率は高まる一方である。人口は減り続けて2025年には30万人を下回り、約3人に1人が高齢者になると考えられている。その秋田市で、スマートシティ・プロジェクトが2011年度から始まっている(図1)。そのコンセプトは明確だ。「高齢者が安心して暮らすことができ、しかも地域経済の活性化によって持続可能な街づくりをしたい。そう考えた結果、必然的にスマートシティ・プロジェクトにたどりついた」(秋田市環境部 担当者)。

図1●秋田市のスマートシティ・プロジェクトのイメージ
(出所:秋田市役所)
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 秋田県は日本で最も高齢化が進んでいる県の1つである。その中核都市である秋田市が高齢化という課題をいち早く乗り越えれば、日本の地方都市の革新のモデルケースとして全国から注目を集めるだろう。また、経済産業省が進めるプロジェクト「次世代エネルギー・社会システム実証」の4地域(横浜市や愛知県豊田市、京都府けいはんな学研都市、北九州市など)には採り上げられなかった、北国の地方都市ならではのスマートシティが実現できれば、海外にも輸出できる新しいインフラのモデルができる可能性もある。

まずは市役所が手本を見せる

図2●エネルギー使用状況の表示画面
(出所:秋田市役所)
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 秋田市のスマートシティ・プロジェクトの実施期間は、2011~2015年度までの5年間。現在、計画しているプロジェクトは9つあり、そのうち既に動き出したものが2つある。

 動き出したうちの一つが「スマートシティ情報統合管理基盤の構築」である。エネルギーや交通、防災など市の社会インフラの情報を一元的に管理し、リアルタイムの対応を可能にする。2011年度は、エネルギーに関するデータを詳細に分析する基盤システムの導入を進めている(図2)。同システムの運用を2012年度に開始し、2013年度には市役所など大きな施設20カ所から自動でデータを取得し始める。

 これによって市役所全体のエネルギー使用状況を把握し、省エネにつなげることで、毎年15億~16億円かかっている電気代を少しでも節約する計画だ。シミュレーションでは、ピーク電力を7%カットできるという結果が出ている。これだけで電力の基本料金を大幅に下げられる。さらに、エネルギー使用量の大半を占める空調機器やポンプをインバータ制御に切り替え、不必要な動作を抑えて省電力化する。

 まず市の施設が率先して動き、投資に対するリターンを明確にする。これによって民間を引き込み、オフィスビルなどにも応用範囲を広げ、街全体で省エネを実施しようと考えている。