ちょうど1週間前からTech-On!において、「記事で振り返る白色LEDの歩み」という連載を始めました(連載記事などはこちら)。日経エレクトロニクス誌がここ10年の間に掲載してきた白色LED関連の主要記事を抜粋し、土日を除いて毎日紹介するという企画です。全12回の連載でして、今日は第5回を掲載しました。連載は残り7回あります。これからの連載は、いよいよ照明市場に白色LEDが浸透していくところ。どんな風にしてLED照明市場が出来上がってきたのか、その一端をご覧いただけるはずです。

 白色LEDは現在、液晶テレビのバックライト光源や照明光源、さらには自動車用ヘッドランプなどと、あらゆるところに使われています。ですが、10年前は携帯電話機向け(小型液晶パネルのバックライト光源)が大部分。多様な分野で使われるほどではありませんでした。当時の取材を思い起こしてみると、液晶テレビや照明、ヘッドランプなどへの展開を白色LED関係者の皆さんは考えていらっしゃいました。可能性を具現化するにはあらゆる面で現実と理想の差は歴然でしたが、その後の白色LEDの特性向上と価格低下によって理想が現実になっていったという感じです。白色LEDという小さな部品が変わることで用途が大きく広がるだけでなく、部品が機器を変えていく事例だと思います。

 白色LED市場は今後どこまで拡大していくのでしょうか?市場の牽引役は今のところ、液晶テレビ向けです。ただし、液晶テレビ市場が成熟期に入りつつあります。しかも、白色LEDの性能向上と低コスト化の圧力の強まりから、液晶テレビ1台当たりの白色LED搭載個数が減っています。このため、液晶テレビ向け白色LED市場は金額ベースで早晩ピークを迎えて減少に転じるといわれます。液晶テレビ向けに代わって白色LED市場を牽引するとみられるのが、照明向けです。東日本大震災以降、LED照明の普及が加速する日本のみならず、LED照明は世界的に拡大基調にあります。2014年の段階で、照明全体に占めるLED照明の割合は10%に満たないとの調査があり、白色LED市場は長期的に見れば伸びていくといえるでしょう。

 ただし、市場見通しが不透明な部分は少なくなく、白色LEDメーカーのみならず、部材メーカーから照明器具メーカーまでの関連企業にとって、懸念すべきことは多々あります。有望市場を自社ビジネスに結びつけていくには、幾つか考えていかねばなりません。

 その一例が、企業競争環境の変化です。有望市場なので、数多くのLEDメーカーが大規模な設備投資を行いました。それによって白色LEDの生産が増強されたのですが、過当競争が懸念されています。“液晶テレビ向け”から“照明向け”へという市場の牽引役の交代期において、液晶テレビ向け市場のピークアウトが予想より早く訪れたりすると、白色LEDの需給バランスが一気に崩れる危険性はないとは言い切れません。中でも、中国メーカーの動向が気掛かりです。「拡大するであろう」需要を見越して生産装置を先行導入したことで、需給関係のバランスが崩れているとの指摘があります。

 白色LEDを思った以上に安く手に入れられる可能性がある照明器具メーカーも、安泰とは限りません。明るく、低消費電力、かつ安い白色LEDを入手しやすくなることからLED照明に新規参入するケースは多々あります。Tech-On!や新聞の記事、展示会での出展者の顔ぶれを見ると、数多くのメーカーがしのぎを削る姿が浮かび上がってきます。

 こうした白色LEDの市場状況を見極めたいと考え、日経エレクトロニクスでは2012年3月9日(金)にセミナー「LED市場展望、アプリとチップ動向、中国事情を見極める」(場所:東京ビッグサイト)を開催することにしました(詳細はこちら)。LEDデバイスの需要予測や中国におけるLED照明産業を専門家に語ってもらう予定です。パネル・ディスカッションでは私が司会・進行をさせていただきますので、専門家の方々にいろいろと質問してみたいと考えています。セミナーの開催場所である東京ビッグサイトでは、セミナー当日にLED照明関連の展示会「LED Next Stage」が開かれています。セミナーは13:30から始まりますので、午前中に展示会を見て、午後にセミナー参加ということも可能です。LED市場展望に興味のある方、ぜひセミナーにご参加ください。