一方、MacBook Proの独占受注を崩されたQuantaは、2011年通年のノートPC出荷量が前年比7.1%増の5580万台と、昨年も世界最大手の地位を守った。ただ、MacBook Proの受注流出のほかにも最近、気になるニュースがあった。これまでQuantaが握っていた材料・部品の調達権限を、ブランドメーカーが取り上げたという観測が、市場や業界で続いて流れたのだ。

 その一つがネット通販大手の米Amazon社にまつわる話だ。当社も「『アマゾンよ、お前もか』次世代Kindl Fire用部品の調達権限をクアンタから取り上げ」として伝えたが、Amazonが、2012年第2四半期の投入を予定するタブレットPC「Kindle Fire」の第2世代について、生産を委託するQuantaから部品調達の権限を取り上げるというもの。台湾の経済紙『工商時報』(2月17日付)によると、Amazonは昨年11月に発売した初代のKindle Fireについては、Quantaに部品調達の権限を与えていたという。

 Amazonが11年第4四半期に前年同期58%の減益となったことから、市場では、同社が今後もKindle Fireを199米ドルという安価で販売していけるのかどうかに関心が集まっていた。台湾の業界筋は、「Amazonは低価格戦略を維持するために、第2世代のKindle Fireの部品調達の権限を自ら手中にすることで、コストダウンを図るのが狙い」と指摘する。

 同じ時期にはPC世界最大手の米Hewlett-Packard(HP)社が、昨年までQuantaなど台湾のEMS/ODMに100%与えていたノートPC用コネクタの調達権限を、今年は全体の3割程度、自社が握るという話が業界に流布した。利益獲得の強化が目的で、バッテリー用コネクタ、USB3.0、DCパワージャックが対象だという。

 ノートPC受託生産の利益率は近年、3~4%台にまで低下している。こうした中、EMSは部品の購買を通じてかろうじて利益を確保してきた。

 『工商時報』(2月15日付)の伝えた消息筋によると、PC業界ではこれまで、パネル、DRAM、CPU、ハードディスクドライブ(HDD)など比較的単価が高く、在庫管理のよしあしがリスクに直結する部品については、ブランドメーカー側が完全に購入権限を握っていた。これに対してコネクタについては、台湾ASUSTeK社や韓国Samsung Electronics社など開発力を持つ少数のメーカーは自ら掌握しているが、セールスに重点を置くHPや台湾Acer社などは、購入権限を受託生産メーカーに与えていた。

 コネクタの場合、EMSは部品メーカーからの購入価格に3~5%上乗せしてHPなどブランドメーカーに部品表(BOM)を提出。これによりNB需要の低迷や、加工賃の安さを補ってきたという。

 ところがHPは2011年から方針を変更。EMSから、サプライチェーンのコストを熟知している人材を引き抜き購買チームを拡大。その上で12年からコネクタの購入権限を取り戻すという。台湾の業界筋は、「Quantaにとっては、最後に1本だけ残されていた利益獲得のための道が閉ざされたも同然だ」と指摘する。

 クアンタの苦境を伝える報道を尻目に、フォックスコンが第2世代Kindle Fire全量のアッセンブリーを受注したとの観測も出ている。労働環境などで批判を浴びながらも、EMSの中でフォックスコンの存在感は増すばかりのようだ。