デパートや駅構内で、スマートフォンなどの地図上に自分の位置を表示できるサービスを、米Google社が2011年11月30日に始めました(関連記事)。「地図上に位置を表示できるサービスは、これまでもあったじゃないか」。確かに屋外ではそうでした。それが今回は、屋内にも広がったのです。

 ユーザーから見れば、あまり大きな違いを感じられない屋外と屋内での位置の測定(測位)。ところが、サービス提供者にとっては、大きな違いがあります。屋内は人が多く集まるからです。人々の位置に基づき、“ネット”から情報提供して“リアル”の店舗に集客する「O2O(オンライン・ツー・オフライン)」と呼ぶ手法の切り札になると期待を集めています。

 屋内における位置情報の応用先は、商業用途にとどまりません。将来は、屋内での子供や老人の見守り、オフィス内の人の位置に応じた空調管理、災害時のビル内での避難誘導など、安心・安全、省エネ、災害対策といった幅広い分野で活躍しそうです。

 屋内向け測位技術の開発も活発化しています。屋外のGPSに代わり、屋内では無線LANなどを使った新たな測位技術が必要になるからです。屋内測位技術を開発する日本の技術者は、これまでに数々の実証実験を繰り返して課題を抽出してきました。「屋内地図はどのように整備したらいいか」「測位精度はどの程度必要か」といった課題に対して、解決策を探るのです。

しかし、実証実験を繰り返している間に、Google社が屋内での位置情報提供サービスを始めてしまいました。ヤフーも、実用化を視野に試験サービスを始めています。ベンチャー企業のスポットライトが提供する「スマポ」という屋内測位サービスも、都内を中心に採用が広がっている状況です。

 屋内測位技術が実サービスで使われ始めたことで、実証実験に費やす時間は、あまり残されていないでしょう。あるサービス提供者は、「2012年はさまざまな技術を試す期間。2013年以降に技術の候補が見えてくる」としています。測位精度の他に、導入コストなどの実用化の容易さが、Google社などの既存のサービスを上回る、あっとおどろく屋内測位技術の登場が待たれています。

日経エレクトロニクスでは、2012年2月20日号に屋内測位技術に関する解説記事「活用始まる屋内測位、高精度化で広がる用途」を掲載していますので、ぜひ一度ご覧になってください。