4Qは赤字拡大、通期でも1500億円超の営業赤字

 台湾TFT液晶パネル最大手の一角を占めるAU Optronics社(AUO)は、2011年第4四半期決算の説明会を実施した。連結売上高895億500万台湾ドル(対前年同期比(YOY)-13%、対前期比(QOQ)-10%)、売上総損失102億9300万台湾ドル(YOY赤字拡大、QOQ赤字拡大)、営業損失174億9400万台湾ドル(YOY赤字拡大、QOQ赤字拡大)、当期損失209億8600万台湾ドル(YOY赤字拡大、QOQ赤字拡大)だった。売上総利益率は-11.5%(前期は-9.2%)。営業利益率は-19.5%(前期は-17.0%)。

 2011年通年では、連結売上高3797億1200万台湾ドル(YOY-19%)、営業損失576億5900万台湾ドル(YOY赤字転落)、当期損失614億4700万台湾ドル(YOY赤字転落)。売上総利益率は-7.4%、営業利益率-15.2%。営業キャッシュフローは145億1500万台湾ドル(YOY-84%)、設備投資額は569億2000万台湾ドル(YOY-33%)。11年の大型パネルの出荷枚数は1億1450万枚(YOY+1%)、中小型パネルが2億4040万枚(YOY-15%)。

 再び第4四半期の詳細に戻ると、出荷数量は大型パネルがQOQ-9.8%、中小型パネルがQOQ-10.6%、大型・中小型パネルの総出荷枚数はQOQ-10%。出荷面積は4158km2(YOY-2%、QOQ-8%)。平均販売価格(ASP)は全体が672米ドル/m2(YOY-7%、QOQ-6%)。稼働率は提示がなかった。在庫はQOQ-7%(第3四半期:515億2100万台湾ドル→第4四半期:478億8200万台湾ドル)、在庫回転日数は45日(第3四半期:44日)。

 アプリケーション別売上構成比は、TV向け42%(第3四半期:44%)、ノートパソコン向け16%(同14%)、モニター向け17%(同19%)、コンシューマ向け(中小型)19%(同17%)、その他6%(同6%)。用途別の増減収率はモニター向けがQOQ+3%、コンシューマ向けが同+1%、ノートパソコン向けが同-19%、TV向けが同-14%、その他が同-10%。

2012年1Q予測

 2012年第1四半期予測は以下4点。(1)大型パネルの出荷枚数はQOQ横ばい~若干の減少、(2)中小型パネルは同-15%、(3)ASPはプロダクト・ミックスの変更によりQOQ横ばい、(4)顧客の在庫水準低下、需要回復により、稼働率はQOQ若干の上昇。

Paul Peng総経理のコメント:高付加価値化、中国、パネル需給

 同社総経理のPaul Peng氏は以下の4点に言及した。

(1)高付加価値製品:今年は3D(24型裸眼、FPR (Film Patterned Retarder、第2四半期量産)、超狭額縁パネル、中小型高精細OLEDパネル(第2四半期)、OGS(One Glass Solution)のタッチ付きスマートフォン/タブレット用パネル(第1四半期)などの新製品が続々と登場する。これらの高付加価値製品の売上比率は昨年の5割から今年は6割以上に上昇する見込みである。

(2)中国との競争:中国メーカーの第8世代工場が量産を始め、今年は32型/46型などのパネルが市場に出てくる。加えて輸入関税の引き上げも行われる。AUOでは独自サイズ戦略、高スペック製品、新アプリ創出などにより、中国メーカーができない部分に注力し、中国メーカーとの差を拡大させていく方針である。

(3)市場としての中国:テレビ市場の高成長期は終わったが、年間10%以上の成長継続が期待できる。加えて、大型化(40型以上が58%と副總經理のMichael Tsai氏が後に説明)、3D化(31%、同上)、LEDバックライト採用加速(84%)と、ハイエンド製品が人気化する市場になっており、その重要性は依然として高い。

(4)パネル需給と価格:2012年の需要前提は面積でYOY+14%、供給能力は同+8%。需給は徐々に良くなり、今年の事業環境は四半期を追うごとに改善するとみる。

2012年の設備投資計画と生産能力、中国投資

 12年の設備投資計画は400億台湾ドルと、第3四半期決算時のガイダンス(300億~400億台湾ドル)の範囲内。生産能力増強のための投資はほとんどなく、先端技術や高付加価値製品(裸眼3Dテレビ向け、3D対応ノートパソコン向け、タブレットPC向け、スマートフォン向け、車載向け、タッチパネル融合製品)分野に集中的な投資を行うと述べた。具体的にはシンガポールの4.5世代工場(L4B)〔LTPS(Low Temperature Poly-silicon)/OLED〕、タッチパネルライン(蘇州/厦門)などに使用する予定。

有機EL、タッチパネルの状況

 Paul Peng氏は、AMOLED (Active-matrix organic light-emitting diode)パネルについて、新竹の3.5世代工場(L3B)を拠点に、12年第2四半期の量産予定で変更なしと述べた。スマートフォン向け、RGB塗り分けで257ppi (Pixel Per Inch)の高精細パネルであり、オンセルタッチパネル付きのハイエンド製品であることを強調した。シンガポールのL4BについてもPMOS→CMOSへのプロセス転換を終了。今年はOLED工程も導入し、二つ目の工場として量産稼働を目指す。

 大型パネルについては、5世代/6世代/8世代工場でOxideパネルの試作を行っていることを明らかにし、今年は昨年の32型を上回るサイズのサンプルを発表する計画。Oxideの生産ラインについては、将来はタブレット向け高精細、4K2Kの高精細TV、もしくはOLED用基板として展開する構想があると述べた。ただし、大型パネルについてはまだ歩留まりやコスト上で克服する必要がある問題が多く、量産ラインの投資については未定とした。また、同社の出光興産との有機EL分野における協業についても、その意義の大きさを強調していた。

 タッチパネルについては、OGS(One Glass Solution)を採用したパネルを2011年第4四半期に少量生産、2012年第1四半期から本格量産開始。用途はスマートフォンとタブレット。一方、OLEDパネルについてはオンセルタッチを採用。インセル型については上期中に開発終了、下期から顧客と共同で導入を開始すると述べた。

 いずれにせよ、既存工場や同社技術のアップグレードにより、製品単価の上昇を図る。中小型パネルの売上比率は現在17%程度であるが、これを順次20%水準に引き上げて行く計画。