プロボノとしてこの団体に参加している人々は、企業に所属する一般社員や管理職、起業家、フリーランスの職業人など多様です。共通しているのは、社会人として専門スキルを持つ人たちが集まっているということ。自らが企業やビジネスの場で得た経験を生かして、相談者が持ち込むさまざまな課題について助言や支援をしています。

 「知識は人についている、企業や組織でそれを囲うのではなく、ソーシャルという大地でそれを育み、イノベーションを創出する」というのが団体のポリシーです。これは、社会人として蓄積した専門知識を、既存の企業や組織の中だけにとどまらず、より広い“社会”という枠組みで活用していくことが、イノベーションにつながるということを示しています。

 こうしたプロボノ団体は、専門スキルを提供する個人と、そのスキルが必要な団体を結び付ける役割を担います。正直なところ、日々の仕事に忙殺されがちなサラリーマンは、なかなか社外の社会貢献活動への参加には踏み切れません。自分のスキルが、どんな社会貢献に生かせるのか、よく分からないことも多いのが実情でしょう。プロボノ活動に携わってみたいと考える人々に支援先や支援内容を紹介し、参加のハードルを低くするのがプロボノ団体です。

 プロボノ団体は、その事業形態で大きく二つのパターンに分かれます。事業会社や弁護士事務所などの営利企業がCSR(企業の社会的貢献)を目的に行うものと、非営利活動としてプロボノ団体自体がNPOなどを組織化して行うものです。

「無償だから適当に」は、通用しない

 NPOのWebサイトを無償で作成する団体から、経営支援やコンサルティング、小額の資金供給まで多種多様な取り組みで支援する団体が存在しています。こうした団体に登録することで既に多くの人々がプロボノ活動に取り組んでおり、技術者の専門スキルを生かせるプロジェクトも今後、増えそうです。 

 もちろん、プロボノ団体は管理者としての機能を備えています。ボランティア・ベースの活動であるが故に、提供するサービスの品質が曖昧になっては意味がなくなります。いわゆるSLA(service level agreement、サービスの品質保証契約)の考え方は、無償だからこそ重要性が高い。「無償だから適当にやればよい」は通用しません。せっかくの専門家としての知見が、うまく社会貢献につながらないリスクが発生しては、元も子もないからです。

 当然ながら、プロボノ活動を手掛けるために、必ずしもプロボノ団体に参加する必要はありません。個人で活動する人々もいます。私もプロボノ団体に参加しながら、個人的なつながりの中で知り合った方も支援しています。

 例えば、この春にNPO団体としてスタートする「ハナラボ」という団体があります。この団体の代表はかなりあ社中が出会うキッカケになった、第2回でお話したイベントで出会った人の一人です。ある日、私のプロボノ活動に注目した、この代表からFacebookでメッセージが届きました。(連載第2回はこちら