技術開発の現場で「ヒト」「モノ」「カネ」をいかに動かすか。資金こそふんだんではないかもしれませんが、景気がなかなか上向かない今だからこそ、限られた資金や人的リソースの中で事業を動かすNPO団体から学ぶビジネス手法は多いでしょう。

 会社員として企業内で自身のスキルを発揮しつつ、少しでいいから社会貢献活動にもそのスキルを活用する。そして社会貢献活動の中からビジネスで活用できそうな手法を企業の中に持ち帰る。この循環は、自分が勤める会社にも新しい働き方や価値観をもたらす可能性があります。企業を内部から変革していくキッカケになるかもしれません。

 企業の営利活動と、社外の非営利活動がサラリーマンを軸としてコラボレーションしていく過程を、かなりあ社中では「ソーシャル・リーマンズの循環モデル」と呼んでいます。サラリーマンの活動がまるで社会の血液の流れのようにふるまい、社内から社外へ、社外からまた社内へと循環していくイメージです。

 もちろん、一人ひとりの気付きは小さなものかもしれません。それでも、多くのサラリーマンが少しずつ新たな価値観を得て、それを共有していくことは、大きな変化につながる可能性を秘めていると思うのです。

ミッション(社会的使命)達成を第一に考える

 そもそも、「企業は社会に何かしらの貢献をすることで収益を得る団体」という考え方があります。ものづくりの企業はモノによって人々に豊かさや満足を、サービスの企業は楽しさや便利さを、社会に提供しています。それがいつの間にか「収益を得ることが優先」にこだわるようなり、社会貢献の見返りのはずだった収益自体が目的になってしまっている。そう言ったら、言い過ぎでしょうか。

 今、求められているのは、企業が忘れてしまった、あるいは「収益獲得を第一目的にする」企業ではなかなか実現できない、「公共善」でしょう。公共善という言葉はプロボノの語源。それが、ここにきて興隆を見せ始めているプロボノ活動の背景にあるのだと思います。この公共善という言葉は哲学的で、ソクラテスにでも変身しない限り、その定義を理解するのは難しい。でも、そんなに難しく考える必要もないと思います。

 簡単に言えば、「利益を得ることが目的ではなく、ミッション(社会的使命)達成を第一に考える取り組み」ということ。これは、NPO活動の本旨でもあります。「社会人」には、収益目的の他にも何か実践すべきことがある、その一つが「公共善」の活動なのでしょう。収益を高めることを求められる企業人なのに「公共善」に向かうサラリーマン。この「二つの顔」を持つことこそが、ソーシャル・リーマンズの姿の一つなのです。

 かなりあ社中の3人はそれぞれ異なるプロボノ活動に携わっていますが、会社の仕事とは別に時間を割いている理由はこんなところにあります。

 今回は、抽象的な話題に終始しましたが、次回は少し詳しくプロボノについて紹介したいと思います。

(この項、次回に続く)