これが拡大されて、会計士や医師など専門性の強い職業に携わる人々が、自身の専門サービスを提供するボランティア活動のことをプロボノと呼ぶようになりました。
この活動が表舞台に出るようになったのは、2000年ごろのこと。特に米国では、さまざまな専門家がNPO(非営利組織)や中小企業などを無償で支援する取り組みが活発になりました。その後、プロボノ活動は組織化が進んでいます。専門家ネットワークと、支援を受ける組織(サービス受託者)をつなぐ「マッチング」を生業とする「プロボノ団体」が現れ始めたのです。
その先駆けは、米国サンフランシスコに本拠を構える「Taproot Foundation」という団体。2001年の発足以来、1300件を超えるプロボノ・プロジェクトを運営しており、78万時間の専門家によるボランティアのサービスを提供してきたと言います。この団体では、いわゆるプロボノ活動を「サービス・グラント」(サービスの助成の意)と呼んでいるようです。日本では、Taprootに出向いた人物が2005年に「サービスグラント」という名称のプロボノのNPO団体を立ち上げました。
サラリーマンにも無縁ではない
プロボノが国内で注目を集め始めたのは2009年の終わり。東京で大きな関連イベントが幾つか開催されたことがキッカケでした。翌年には、新聞やテレビ、インターネットのメディアで大きく紹介され始めたので、耳にした読者は多いかもしれません。このため2010年は、関連の業界で「プロボノ元年」と呼ばれています。
何を隠そう、ミーハーな私もこのプロボノ元年にテレビ番組でプロボノの存在を知りました。その意味では、新参者です。実は、「こんなところで、偉そうに説明してもいいんでしょうか」と少しの葛藤を抱きながら、ドキドキしつつ説明しています。でも、私のような「普通のサラリーマンでも参加できる」というのが、まさにプロボノのプロボノたる所以なのです。
では、プロボノと呼ばれる活動は、いったい何なのか。弁護士や医師といった特殊な専門性を持つ人だからできる特別なサービスで、サラリーマンには無縁のものなのでしょうか。
実は、そうでもないのです。
例えば、Tech-On!の読者に多い技術者や研究者は、その専門スキルをかなり求められている職種と言えるでしょう。Webサイトの構築やパソコンの技術指導といったものは、その間口の一例です。「技術 ボランティア」というキーワードでインターネット検索すると、かなり多くのサイトが現れます。検索結果のすべてがプロボノ活動に関連しているとは限りませんが、今後、プロボノが一般的になるに従い、技術者の専門性を生かすプロボノ・プロジェクトは増えていくことになりそうです。