日本のエンジニアも必ずしも会社に頼るのではなく、自分自身の力で生き残ることが、いよいよ必要になってきたのではないでしょうか。

 従来の、終身雇用を前提とした会社で昇進するためには、何よりも直属の上司や会社内部での評価が重要でした。必ずしも、社外にアピールできるような技術論文や特許を数多く書いた技術者が出世するわけではありませんでした。

 一方、これからは、自分自身を一つの商品と見立て、マーケティングを行うことが必要です。すでにエンジニアの皆さんには、商品として最も重要な、技術力は十分に身に付いていると思います。あとは、身に付けた技術力をアピールすること。

 技術力のアピールとしては、従来は学会での論文発表が一般的でした。私は国際会議や日本の学会の運営にも携わっていますが、企業のエンジニアの方々の論文数や参加者が上がるどころか、むしろ、年々下がっていることに大変心配しています。

 最近は、どの企業も技術情報の開示が厳しくなってきており、論文発表を社内で認めてもらうには、ハードルが上がっているのでしょう。また、眼の前の事業が厳しい時に、「論文など書いて遊ぶな」と言われてしまい、論文を書きにくい雰囲気もあるでしょう。コスト削減から学会参加も難しくなってきている。

 しかし、事業が苦しくなればなるほど、社内に閉じこもってしまうという現状では、いざ、自分自身で仕事を探さなければいけない時に、自分が社外の人に知られていないばかりに、チャンスを逃した、ということになりかねません。

 転職の活動をされた方はご存じだと思いますが、仕事を見つけるためには、転職先の人を紹介してくれる、人的なネットワークが重要です。また、転職先に応募した時に、参照できる人・推薦者を2~3名求められることもよくあります。

 実際、私が研究員を採用する際に、応募して下さる方には推薦者を求めています。ところが、社内だけでしか活動していない人は、なかなか推薦者を見つけることができない。今務めている会社には内緒で転職活動をするわけですから、推薦者は、社外で信用できる人になりますが、それが見つけられない。