今回紹介する書籍
題名:経営未来 商政軍界的巨人们是这样思考的
作者:曹俊杰
出版社:武漢出版社
発行日:2010年11月

 今回は『経営未来 商政軍界的巨人们是这样思考的(未来をマネジメントする ビジネス、政治、軍隊の巨人はこのように考える)』のガイドの最終回。  

 前回ご紹介したエピソードからわかるように本書は「未来をマネジメントするためには徹底して頭を使い、徹底して行動すること」という考えに貫かれている。そんな本書にはいくつかキーワードとなる言葉がある。その内の一つが「戦略を決める」である。徹底して考え戦略を決めてから動く、それが本書が掲げる成功の方法である。エピソードを見ても常識的に考えても多くの人が本書の考え方に賛同するであろう。

 そこで、本書は「なぜ多くの人は行動する前に徹底して考えて戦略を決めないのか」という問題提起をする。そして、その答えは「多くの人は困難にぶつかるとあきらめてしまうからだ」ということだ。確かに我々は、物事を計画する時に順調に進んでいる間は積極的に考え、細部まで詰めようとする。ところが、困難にぶつかると考えるのを止めてしまったり、あるいは計画そのものを放っておいたりするようになる。本書ではこのような場合の対処法として「困難観を持て」と言っている。通常、困難というのは人から嫌われるものだが、困難を嫌うのは一面的な見方によるものだ、と指摘する。困難はたしかに不利益な存在だ。しかし、困難を不利益な要素だと考え、単なる邪魔ものだと考えるのは正しくない。なぜならば困難というものの存在には他の意味があるからである。

 ある意味では困難というのは「収穫」なのである。困難を乗り越えたときに初めて人は収穫を手にする。ということは、困難の後ろには収穫を手にする機会が潜んでいるということなのだ。それゆえ、困難を嫌うのではなく、「正しい困難観」を持ち、状況に対処すべきなのである。

 話を「戦略を決める」ことに戻そう。つまり、本書によれば、困難に出合った時にも困難を嫌わず乗り越えて戦略を決めることが重要なのである。また、本書では「戦略を決める」ためのルールを挙げている。まず、「総則」としては

1.成功は物事に対する徹底した理解から始まる。また、戦略決定の正確さは物事の来歴、現在及び未来の発展に対する認識がどれだけ、全面的、体系的かつ深い物であるかによる。  
2.戦略決定の効率は戦略決定の手順による。

の二つを挙げている。そして、細則として

1.情報が充実していればいるほど戦略決定は合理的になり、完成度が高まる。
2.ロジックの分析が徹底しているほど、予測は多方面に及ぶことができ、戦略決定は合理的になる。
3.予測が完璧に近いほど、戦略決定もより正確になる。
4.計画のデザインが完璧に近いほど、戦略決定も合理的になる。

 要は、いい情報をたくさん集め、ロジックを徹底的に分析し、広範囲にわたるできる限り詳細な予測を立て、実行計画はより完璧に近づけろ、ということである。それができれば、どんな計画も上手くいくであろうことは読んでいる私たちにもよくわかる。本書ではこの困難な条件をそろえるための様々なやり方が紹介されている。本稿でそのすべてを紹介することはできないが、上記のような「戦略決定の法則」を頭に入れ、様々な問題にあたり、歴史や偉人のエピソードをよむことにより、我々も未来をマネジメントすることができるのではないか、と感じさせてくれる良書であった。